旅日記北海道編2004 集結(7)




第7日目 地獄谷、倶多楽湖、苫小牧



1 地獄谷で現実に引き戻される


午前5時、再度目を覚ました。今回の旅でずいぶん早起きになってしまったらしい。それにしても、貴重な旅の最後の夜を!折角酒でも飲んでゆっくりしようと思っていたのに。多分、想像以上に疲れが溜まっていたのだろう。やっぱり野外3連泊は失敗だったか。
 見ると松本、ユキノリはまだ寝ている。俺は起こさないように静かに部屋を抜け出し、大浴場に向かった。

 流石にこの時間は人がほとんどいない。俺は貸切状態の温泉を十二分に楽しんだ。
 「うぃ〜っす!」松本が風呂に入ってきた。彼もすっかり早起きに慣れている。「三宅、すぐに寝ちまうんだもんな〜。」「すまん、すまん…。」聞けば、松本もユキノリも9時過ぎには寝てしまったらしい。

 地獄谷入口の鬼 地獄谷

 第一滝本館をチェックアウトし、俺達は目の前にある「地獄谷」に足を運んだ。地獄谷は一万年前の火山の噴火した火口跡であるという。旅館の温泉から地獄谷の全景は既に見ていたのだが、間近に見ると、多量の蒸気や熱湯が噴き出し、硫黄の匂いが立ち込め、なかなかの迫力である。赤茶けた岩肌に、三途の川…。まさに地獄を思わせる風景だ。ここには竜巻地獄、大砲地獄、血の池地獄等と名付けられた様々な地獄がある。明日から俺には仕事地獄が待っているのだが。

 大湯沼 倶多楽湖1

 地獄谷を後にした俺達は倶多楽湖(クッタラ湖)に向かった。倶多楽湖は地獄谷の剣が峰の裏側にあるカルデラ湖で、周囲は約8・5キロ。ほぼ円形をしている。その水の透明度は摩周湖に次ぐといわれている。途中の展望台から見ても綺麗な湖だと思ったが、湖に近付くとその透明さが際立ちさらに美しい。泳いでいる魚がくっきりと見える。ヒメマスを養殖しているらしい。考えてみると、今回の旅で晴れた湖を見るのはここが最初で最後である。

 倶多楽湖2 倶多楽湖3

 「ボートが邪魔だな〜。」松本がつぶやいた。全く同感だ。スワン型の貸しボートが何艘か浮かんでいる。これ程綺麗な湖なら、もっと神秘性を強調した方が人気が出ると思うのだが。まあ、あまり人気が出ても弊害が多いので、これ位で丁度いいのかもしれない。

 名残惜しいが、今日は旅の最終日。フライトの時間もあるのであまりゆっくりは出来ない。俺達は後ろ髪引かれつつ登別を後にした。



2 最後の食事はジンギスカン


苫小牧へ向かう車の中、俺達の会話は驚くほど少なかった。明日からの仕事、名古屋の厳しい残暑を思うと憂鬱であった。ユキノリも同様であろう。
 むさくるしい男三人での旅は、苫小牧駅が終着地である。今日の午後のフライトで、俺は北海道を後にする。ユキノリは夕方の便を取っていた。松本は俺達を送った後、函館方面へ行き、フェリーで青森へ行って東北の方も旅するという。

松尾ジンギスカンのジンギスカン
 途中、苫小牧付近の「松尾ジンギスカン」に立ち寄った。生憎、開店前だったようだ。店の前で待っていると、開店前なのにご主人が出てきて入れてくれた。
 松尾ジンギスカンは、北海道を代表するジンギスカンのチェーン店である。店舗も沢山あるが、現在ではお土産用のパックも通販等で気軽に買うことができる。食べ比べるためラムとマトンを両方頼んだ。
 肉とご飯が運ばれてきた。果汁や調味料、香料等をブレンドした特製のタレに漬け込んだ羊肉を、専用鍋で焼く。いい香りがしてきた。一般的に羊肉は癖があるといわれるが、ラムもマトンも特製タレに漬け込まれ全く臭みがない。そのため、マトンに比べてラム肉の方がかなり軟らかいという他はそれ程大差はないという印象を受けた。ただ言えることは、どちらも間違いなく美味いということだ。
 「美味いな〜!」松本もユキノリも絶賛する。「流石は北海道!」
 松尾ジンギスカンの羊肉はニュージーランド産だということを二人には黙っておいた。

 いよいよ苫小牧駅に到着した。思ったより小さな駅だ。
 「ありがとう。気をつけてな!」俺が手を振ると松本とユキノリが手を振り返した。「荷物、悪いな。」「いいよ。家着いたら連絡するから。」俺のテントや寝袋等、かさばる荷物は松本が車で運んでくれる事になっている。
 「じゃあな、尊師。東京着いたらメールする!」ユキノリが言った。言い忘れていたが、大学時代の俺のニックネームは「尊師」だ。ユキノリはフライトまでもう少し時間があるため、もう少し周辺をドライブするという。
 俺はもう一度大きく手を振った。エンジン音が大きくなる。

 一人分の空席ができたHIACE LEGIUSを、俺は寂しく見送った。



3 終章


午後4時過ぎ、名古屋空港に到着した。…暑い。北海道との温度差に軽い眩暈を感じた。明日からは仕事だ。いい加減気分を切り替えないと。
 家に着いた俺の携帯に、松本から、ユキノリから、森から、なべさんから、H野さんから、それぞれメールが入った。今年は天気に恵まれず、思い通りにならないことも多かったがいい旅だったと思う。感動を分かち合える仲間がいるというのは素晴らしいことだ。

 松本は函館方面へ向かい、その後、青森、秋田、仙台等を旅し、愛知に帰った。函館付近で、スピード違反で捕まり、切符を切られたという。

 ユキノリは夕方の飛行機で東京に帰った。初めて行った新千歳空港の広さに感動したという。

登別にて  森は変わらず残業の日々だという。

 なべさんは登山と柔道に明け暮れているという。

 H野さんはその後、礼文島や小樽等の観光を楽しんだという。

 家には先に送った土産が山積みになっていた。ダンボール一杯の土産を見つめながら、俺は早くも次回の旅に思いを馳せていた。



 旅日記北海道編2004 集結 



 今回の旅で消費したセイコーマートジャスミンティーペットボトル 11本






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