旅日記北海道編2004 集結(2)




第二日目 旭川、層雲峡、糠平湖、サロマ湖



1 目覚めの一杯は旭川ラーメン


周囲が騒がしくなり俺は目を覚ました。未明のうちに旭川に到着した俺達は、道の駅で仮眠をとっていたのだ。旭川での目的は、ラーメン村に行き、本場の旭川ラーメンを食べることである。開店時間まではまだ少し時間があるようだ。道の駅で洗顔を済ませ、身支度を整える。丁度、道の駅では道北物産展を開催しており、朝から行列ができていた。物産展を物色し、食後のデザートとして上川町の牛乳で作ったプリンを購入した後、「旭川ラーメン村」へ向かう。

 旭川ラーメン村は8軒のラーメン店から成っていた。迷った挙句、「山頭火」に開店と同時に入る。  山頭火は旭川ラーメンを代表する有名店で、全国に40店以上の支店がある。そんなに支店があるなら、わざわざそこにしなくてもって言われるかもしれないが、山頭火は何故か中部圏には一店もないので未経験なのだ。
 三人共「塩ラーメン」と「ねぎめし」を注文する。山頭火の塩ラーメンは写真等ではよく見たことがあったが、実物を見るとその外観のセンスの良さに唸らされた。白濁したスープに小梅の赤、木耳の黒、葱の緑、ナルトのピンク。なかなかお洒落である。豚骨ベースのスープは全く癖がなく細めのストレートな麺によく合っている。叉焼も豊富に入っていて食べ応えがある。旭川ラーメンというと、「蜂屋」のように濃厚な豚骨と魚介系を合わせたスープのイメージがあったが、山頭火は非常に癖がなく、食べやすい。「基本は食べやすさ」と強調しているのに納得できた。締めの小梅で後味もさっぱりする。美味かった。ごちそうさま。
 一方、「ねぎめし」は、正直、葱と一緒に乗った鰹節の味が強すぎて今ひとつだった。松本も「これなら『ネギいち』のネギ丼の方が美味いな。」と首をひねっていた。

 旭川を後にした俺達の次の目的地は層雲峡だ。銀河の滝、流星の滝、大函と続けて見て行く。紅葉の始まりかけた山々の景観が美しいが、如何せん人が多い。俺はどうも観光地化されすぎた場所は苦手である。ただ、大函の売店で買った「頑固おやじソフト」は美味だった。

 大函にて 頑固おやじソフト

 大雪湖を横目に、国道273号を南下する。途中立ち寄った三国峠は、標高1150mに位置する北海道一標高の高い峠である。峠の駐車場に車を停め、景色を眺める。
 「すげぇな!」俺達は目を見張った。東大雪の山々と、その裾野に広がる大樹海の雄大さ。あんな樹海に迷い込んだら絶対出られないだろうな。駐車場からの眺望より、道路から見た風景の方が良いことに気付いた俺達は、安全な場所に路上駐車し、少し歩いて橋の上から再度樹海を見渡した。

 三国峠にて 樹海を見下ろす

 「おおっ!」松本もユキノリも興奮して写真を撮っている。この樹海が全て紅葉したら、一体どれ程の光景が見られるのか?
 さらに国道を南下し、俺達は糠平湖を目指した。


2 野郎三人、湖畔に佇む



糠平湖は人造湖ながら、大雪の山々を背景にした美しい景観を見せる湖である。糠平湖を北側から回り込む形で林道に入る。目的地はタウシュベツ川橋梁。タウシュベツとは、アイヌ語で"白樺の多い沢"という意味である。糠平湖周辺には旧国鉄時代のコンクリート製アーチ橋群が散在しているのだが、今回俺がどうしても見たかったのは、旧線となり役目を終えた、湖上のタウシュベツ橋梁である。

 タウシュベツ橋梁入口 倒木

 林道をしばらく行くと、車を数台停められる程度の駐車場があった。バイクとスポーツカーが一台ずつ。先客がいるようだ。車を降り、細い林道に入って行く。台風の影響か、根元から倒れた大木が転がっている。足下をリスが駆け抜けた。今回の旅、初めての野生動物との出会いである。

 糠平湖 アーチ橋

 視界が開けてきた。糠平湖が眼前に広がる。生憎の曇り空ながらなかなかの景観だ。白いアーチ橋も見えてきた。糠平湖は雪解けが進む6月頃から増水し、それによりこのアーチ橋は水没を始める。そして10月頃には完全に湖底に沈み、1月頃、凍結した湖面に再び姿を現すという。人造物である湖に、アーチ橋。しかし、それは昔から自然にあったように背景の山々と防風林に溶け込み、神秘的な美しさである。

 崩落注意の看板が 松っあんとアーチ橋

 「これって渡れるのかな〜。」ユキノリが興味を示してアーチ橋に近付いた。崩落注意の看板はあるものの、通行禁止とは書いていない。
 9月になり、だいぶ水位が上がってはいるが、まだアーチ橋は完全に水没していない。だが、70年近い歴史、さらに、毎年水没を繰り返すことでコンクリート製の表面は相当侵食されていた。鉄筋もむき出しになり、かなり老朽化が進んでいることが見て取れる。アーチ橋に上がるのは止めておいた方がいいだろう。

 形あるものはいつか滅びる。世の無常を再認識させるこの場所を、俺は強く心に刻んだ。



3 野郎三人 VS カニ軍団


俺達は進路を北東に向けていた。今夜の宿は、サロマ湖の「船長の家」を予約している。船長の家は、安価な料金で大量のカニを食べさせることで有名な民宿だ。俺は今年で三年連続の宿泊、松本は数年振り、ユキノリは初めてである。
 「そこってそんなにカニ出てくんの?」ユキノリはまだ船長の家の恐ろしさをわかっていない。
 「ああ。だから、俺はほとんど間食してないだろ?」実際、今日は午前中に旭川ラーメン、層雲峡での"頑固おやじソフト"しか俺は口にしていない。

 サロマ湖付近になって小雨が降ってきた。サロマ湖での夕日は今回は諦めねばなるまい。途中、セイコーマートで安ワインとジャスミンティーを購入する。俺にとって、セイコーマートのジャスミンティーは旅の必須アイテムになりつつある。

 船長の家前にて 船長の家新館の部屋

 船長の家に到着した。今回は初の新館である。料金は千円ほど高いが、部屋にバス・トイレ、アメニティグッズ、浴衣等も完備している。それでも、某旅行雑誌の10%割引券を使えば7,000円でお釣りが来る。夕食時間まで温泉に入り、俺達は二日分の汗を流した。
 夕食の準備ができた旨、館内放送が入った。さあ、いよいよ戦闘開始である。俺達はドタドタと食堂に向かった。

 「すげぇ!」ユキノリがまず第一声をあげた。テーブルに並ぶのは、毛ガニ、タラバ、鍋(蒸しタラバ)、カニしゃぶ、鮭(味噌煮と大根おろしをかけたもの)、煮魚、ワカサギ、ツブ貝、氷頭ナマス、卵とじ、茶碗蒸し、サラダ風、カニ飯、グレープフルーツ。あちこちで客が歓声が聞こえる。恒例の記念写真タイムも始まった。だが、これで驚いてもらっては困る。
 俺達は黙々とカニの身を剥き始めた。あっという間にカニの身の山ができた。ユキノリはカニの殻で指先を傷つけ、早くも苦戦中だ。松本はマイペースにカニの身をしゃぶっている。さて、俺の経験ではそろそろ来るはずだ…。

俺達の戦場にて、カニ軍団が並ぶ

 「蒸しアサリで〜す。」キタ━━(゜∀゜)━━ !追加メニューだ。恐らく4品位は来るだろうという俺の予想通り、この後、焼き帆立、焼き牡蠣、ホッキのバター焼きが追加された。
 「まだ来るの〜!?」ユキノリが嬉しい悲鳴をあげる。ここでのコツは、まず数品を手際良く片付け、テーブルに空きスペースを作って追加メニューに備えることだ。
 「やたらと汁の飛び散る物ばかりだな〜。」松本が言う。実際、松本のグレープフルーツの汁が、ユキノリの目に入っていた。飛び散った食材の汁、破片が散乱し、テーブルの上は戦場と化していた。
 だが、昨年はかなり苦戦した筈のカニ達も、野郎三人にかかればひとたまりもない。テーブル中央にはカニや貝類の殻が山のように積み上げられた。今回、他の旅行者もツワモノが多いらしく、途中でテーブルを離れる人は皆無であった。また、宿に頼んで残したカニを取っておいてもらうという方法もだいぶ一般化されたらしく、数人のおばちゃん達が従業員に頼んでいた。

 「食った、食った〜。」俺達は満足して部屋に戻った。再度温泉に入り、返り血(カニの汁)を洗い落とす。セイコーマートの安ワインを開け、昼間買っておいた上川のプリンを食べる。昨日はあまり寝ていないため、すぐに眠気が襲ってきた。うとうとしていると、天気予報を見ていた松本が叫んだ。
 「おいっ!明日雨だぞ!!」俺も慌てて飛び起きる。確かに明日の予定は雨、明後日は晴れになっている。明日は開陽台泊を予定していた。「開陽台で雨だったら意味がないぞ!」松本が興奮していた。  今回、開陽台に泊まって星空を見たいというのは、松本がどうしてもと希望したことだった。「多和平とか、他にもいい場所いっぱいあるぞ。」と、俺は勧めたのだが、松本は「開陽台に泊まるのは俺の夢だ。」と言い切ったため、開陽台泊を予定に入れたのである。
 俺達は話し合った結果、四泊目の釧路泊と明日の開陽台泊を入れ替えることにした。釧路では友人・なべさんと再会することになっていたため、すぐに予定変更のメールを入れる。明日は知床方面を周った後、一気に釧路まで南下する。明後日は根室、野付を周って開陽台泊だ。だが、この変更が俺達の旅に暗い影を落とすことになる。



to be continued…


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