旅日記北海道編2008後編 茶遊(3)





第7日目 終章




行最終日。
今日から礼文は天気が崩れるそうだ。

 早起きして、独りスコトン岬へ散歩に行く。

 旧スコトン小学校やバス停等を、ゆっくり目に焼き付けながら歩いた。

  

  

 スコトン岬の最果ての雰囲気は、宗谷岬のそれを遥かに凌駕している。

 俺は時間の許す限り、海やトド島を眺めた。

  

  

  

 朝食後、見送りの儀式をしてもらう。

 今日島抜けするのは、俺とみかっちさん。花れぶんちゃんも宿を出るので、見送られるのは3人だ。

  

  

 彦さんがギターを弾き、「忘れないで」の合唱のなか、握手を交わしていく。


 ♪忘れないで 忘れないで この島のことを




 毎日聞いていた「忘れないで」も、自分が見送られる時だと一層感慨深い。

 楽しかった一週間の記憶が溢れ出し、不覚にも涙がこぼれた。

  

 今回最後のスターライナーには、初めて助手席に乗せてもらった。
 今日は島入りの人がいなかったため、朝食の時間等がゆっくり目だった。そのため、フェリーの出航時間が迫ってきていて、ちょっとだけ焦る。
 フェリーターミナルに到着すると同時にチケットを買いに走った。




 今日は、ありがたいことに、宿泊者のほとんどが見送りに来てくれた。

 みかっちさんと一緒に並び、乗船する時、タラップで一人ずつ握手を交わす。

 荷物を置き、急いでデッキへ。
 見下ろすと、皆、一人一人別れの言葉をかけてくれた。




 出航だ。

  

  

 「行ってらっしゃーい!」

 皆の声に、こちらも声を振り絞って、
 「行って来まーす!」と答えた。

 桃岩荘は、「遠い世界に」を歌って踊っている。

 民宿なぎさの、色とりどりの紙テープが宙を舞った。

 彦さん達が駆け出し、見えなくなるまで手を振ってくれていた。


  

  




 船内では、みかっちさんと話して過ごした。
 いつも俺は一人で島抜けしていたので、話相手がいて有り難かった。

 日本沿岸を徒歩で一周しているSさんも同じ船に乗っていて、一緒に記念撮影した。

  

 稚内でみかっちさんと別れた。
 札幌在住のみかっちさんは、高速バスで帰るそうだ。俺は、空港行きのバスに乗った。

 稚内空港で、定番のチョコレート等の土産を買う。
 驚いたことに、マルセイバターサンドも、ロイズのチョコも、ことごとく値上がりしていた。
 チケットは高い、燃料は高い、さらに土産まで高いとは!
 旅人には厳しい時代になったものだ。

 滑走路を、雨が静かに濡らし始めた。

 幸運なことに、礼文島で俺は雨に降られたことがない。今回の旅も同様だった。
 だが、天気予報の通り、俺の島抜けと同時に天候が崩れ始めたようだ。

 今頃、礼文は雨だろう。雨の中、皆は何をして過ごしているのだろうか?




 セントレア行きの飛行機に乗りこむ。
 行きと違い、帰りの客席はガラガラだった。

 飛行機は、厚い雲に覆われた稚内を一気に飛び出した。

  

 心地よい疲労感から瞼か重くなる。

 夢の中の俺は、既に次の旅路に向かっているのだった。



旅日記北海道編2008 完
 


  





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