旅日記北海道編2008中編 独歩(1)





第3日目 礼文島1周24時間コース


8月9日朝食

日は寝苦しくて4時間位しか眠れなかった。

 天気予報は晴れ、時々曇り。歩くには良さそうだ。
 身支度を済ませ、栄養バランスのよい星観荘の朝食をしっかりと食べた。

 24時間経験者のIさんにアドバイスしてもらい、足の指も1本1本テーピングする。

 服装は、寄せ書きしてもらったTシャツに、「桃民」トレーナー。さらに長袖シャツ2枚。

 その他の装備品として、トレッキングシューズ、折り畳み式ストック、カメラ(Nikon COOLPIXP5100)、携帯電話、雨ガッパ、携帯用防寒シート、キャップライト、マグライト、軍手、サポーター等。

 持ち物は、スポーツドリンク1.5リットル(500ml3本)、水筒(水1リットル入り。飲んでもいいし、首や頭を冷やせる)、栄養剤2本、ウィダーインゼリー2パック、ブドウ糖、アミノバイタル、ポッカレモン、薬類(風邪薬、鎮痛剤、胃腸薬、消毒液)、日焼け止め。

 昨日から24時間を歩いているKさんはまだゴールしていなかった。途中で体調を崩し、休みながら歩いているらしい。

 同宿の人達に、Tシャツに寄せ書きをしてもらった。ブラックホールから外を見ると、草原に虹がかかっていた。

 彦さんのギターに合わせて、24時間コースの見送りの儀式をしてもらう。ギターの伴奏と共にスタートだ。

 ブラックホールから虹が見えた  Tシャツに寄せ書きしてもらう

 午前7時30分、星観荘を出発。正直、あまり現実味が湧かない。

 「くもの巣くぐって、24時間♪」皆の歌声が小さくなっていく。

 見送りの儀式  出発前

 送ってもらう  いよいよ歩き出す

 7時40分、鮑古丹。晴れているのに小雨がぱらつく。狐の嫁入りか…。独りつぶやいてみる。ここから見える海は相変わらず綺麗だ。

 鮑古丹1  鮑古丹2

 鮑古丹3  鮑古丹4

 7時48分、ゴロタ岬北側麓。先を上っていく人影は桃岩荘の8時間コースだろう。足元を見ると、エゾウメバチソウが可憐に咲いている。

 ゴロタ北側  エゾウメバチソウ

 ゴロタ岬1  ゴロタ岬2

 8時05分、ゴロタ岬頂上。 北側からゴロタ岬を上るのは容易く、息も切れない。

 景色が綺麗なので、つい写真を撮りすぎてしまう。利尻富士は雲に隠れていた。桃岩荘の後続部隊に追いつくが、道が狭いので追い越せない。仕方なく最後尾に付いて歩いていく。

 ゴロタ岬3  ゴロタ岬4

 ゴロタ岬5  ゴロタ岬6

 ゴロタ岬7  ゴロタ岬8

 ゴロタ岬9  ゴロタ岬10

 桃岩荘の8h 後続部隊  ゴロタ岬

 8時29分、ゴロタ岬南側麓。245段の階段を一気に降りた。やっと桃岩荘の8時間コースの後続部隊を追い越せた。

 ゴロタから見える海  降りてきた階段

 ゴロタ浜北側1  ゴロタ浜北側2

 8時40分、ゴロタ浜。ここは南国か?って位、海も砂浜も美しい。時間が惜しいので、穴あき貝は拾わなかった。桃岩荘の先行部隊を一気に追い越す。

 ゴロタ浜1  桃岩荘8h先行部隊

 ゴロタ浜2  ゴロタ浜3

 ゴロタ浜4  ゴロタ浜5

 8時58分、鉄府トイレ。 尿意はないが、用を済ませておく。ここでは水も補給できる。

 鉄府トイレ  鉄府上り坂から

 9時04分、鉄府から西上泊に向かう坂道。急な登りだが、まだまだ余裕だ。振り返ると、桃岩荘の人々は全く見えない。ちょっとゆっくりすぎないか?

 鉄府のガレ場からの眺め  西上泊を見下ろす

 9時25分、西上泊。既に、スポーツドリンク1本を消費した。すぐにポカリを売店で購入。さらに、景気付けにオロナミンCを一気飲みする。ご主人の道場さんは、昨日も来たことを覚えていてくれた。24時間コースを歩いていると言うと、バナナをくれた。本当にありがたい。
 トイレで水筒に水も補給しておく。

 澄海岬  売店にて

  港を通り抜け、花を愛でながら上り坂。草原のコースに入る。なだらかな丘陵地帯が美しい。

 ハナイカリ  ?

 8時間コース標識  草原のコース

 丘陵地帯  草原を振り返る

 10時08分、召国分岐。時々、ブドウ糖を口に放り込みながら歩く。

   草原から見た海2

 アナマまで5.9キロ  花畑到着

 10時19分、花畑。ちょっとだけ休憩。今まで、澄海岬以外は休憩なしに歩いている。靴が既に泥だらけだ。

   花畑2

 花畑3  靴が泥だらけ

 アミノバイタルの顆粒を飲む。少し元気になった気がした。再び、草原と林道。のコースを行く。

 草原  草原

 林道  宇遠内まで4キロ

 時々海が見える  海がきれい

 11時12分、砂滑り手前の林道で、Bさん、あややさん他、星観荘8時間コースの5名と出会った。

 「早いね〜。」とあややさん。いや、そちらも十分早いと思います。宇遠内の海岸位で会うつもりで歩いてきたのだが。
 お互いに記念写真を撮り合い、別れる。

 8hコースと遭遇  はげ山

 はげ山からの景色  はげ山からの景色

 海を見下ろす  ハマナス

 11時28分、砂滑り。一気に滑り降りるが、麓付近で足を滑らせ転倒。手首に擦り傷ができる。

 砂すべり1  砂すべり2

 砂すべり3  砂すべり4

 11時52分、アナマ岩。ここからは海岸のコースだ。巨大な岩がゴロゴロと行く手を遮る危険な場所だ。それにしても、ここの海岸って、こんなに岩が多かったか?
 凶悪なまでに大きい岩を飛び越えながら進む。油断すると足を痛めるので慎重に進まないといけない。

 アナマ岩  アナマ海岸

 海岸を行く  凶悪な岩場

 滝  宇遠内集落が見えてきた

 12時10分、宇遠内。休憩所「一休み」に入る。ラッキー!開いていた。あとで聞いた話だと、8時間コースのBさん達が通ったときは閉まっていたそうだ。
 ここで昼食にする。星観荘の弁当(Mサイズ)と、とれたばかりだというソイの刺身(300円)を食べる。思いがけず豪華な昼食になった。

 一休み  ソイ刺身

 星観荘の弁当M  豪華な昼食

 刺身は安いが、飲み物は高い。500mlのペットボトル190円也。船での輸送費が高いので仕方ないのだが(宇遠内は船か徒歩でしか行けない)。スポーツドリンク1本購入し、水も補給。バイオトイレで小用も済ませる。

 宇遠内からの坂道  林道

 12時35分、宇遠内を出発する。ここからの山道は単調で、個人的には大嫌いだ。陽射しが強いのも、疲労した身体にはきつい。

 振り返ると海  また上り

 コースは長い長い林道へ。周囲に聞こえるのは蝉の声だけだ。これでもかって位、林道を歩いていく。

 礼文林道分岐  また林道

 13時20分、礼文林道香深井側入口。さらに林道は続く。
 気になるのは、大量発生しているというだ。周囲を飛び回り、油断すると大量にたかってくるため、立ち止まれない。ちょっと荷物を降ろそうとしただけで、2、30匹の虻が襲い掛かってきた。全く休憩できないまま、ストックを振り回して、群がる虻を追い払いながら進むしかない。

 利尻富士が見える  礼文滝入口

 13時55分、礼文滝入口。時々、利尻富士が見え始め、大いに元気付けられる。

 海が見え始める  道を曲がるたびに利尻富士が大きく

 14時18分、レブンウスユキソウ群生地。携帯の電波が立った。初めて宿に連絡し、彦さんに無事を伝える。

 利尻富士1  利尻富士2

 利尻富士3  利尻富士4

 14時40分、礼文林道香深側入口。まあまあなペースだと自己分析する。桃岩荘の8時間コースを、実際に8時間位で歩くペースだろうか(桃岩荘の8時間コースは、一般的に10時間位かかる)。

 礼文林道入口  久々のアスファルト

 14時50分、フラワーロード入口。ここから最後のトレッキングコースが始まる。

 15時10分、桃岩展望台。南に向かい、花の咲く坂道をさらに登っていく。

 桃岩展望台  利尻富士

 フラワーロード  桃岩

 元気な時は歩きやすく整備した簡単なコースなのだが、まるで空へと続くような長い階段が、万里の長城のように立ち塞がっていた。軽く眩暈を覚える。

 ツリガネニンジン  天に続くようなコース

 猫岩  猫岩の穴

 ここからのコースは、桃岩や猫岩を色々な角度から見ることができる。猫岩には、実は穴が開いているのがここからの眺めでわかる。
 見下ろすと桃岩荘だ。とても大声を出す気力はない。

 まだまだ続く  振り返ると

 桃岩荘を見下ろす  元地灯台の標識

 15時55分、元地灯台。ここからはようやく下りのコース。晴れていれば利尻富士が目の前に広がるのだが、曇っているためあまり見えない。

 雲に隠れた利尻富士  元地灯台

 利尻富士に向かい下りる  もうすぐ知床

 16時18分、島最南の集落、知床に到着。
 ここからは、島の東海岸を北へ向かっていく。今後、最後まで地面はアスファルトだ。
 自販機がある、ごくあたりまえのことが感動的だ。この先、水分補給の心配は要らない。お茶を買ってがぶ飲みした。

 知床。自販機がある  香深へ急ぐ

 星観荘では、17時にフェリーターミナルに最終便の出迎えに来る。うまくいけば間に合うかも。俺は早足でフェリーターミナルに向かった。

 16時55分、フェリーターミナル。トイレを済ませ、空のペットボトルやゴミを廃棄し、彦さんの到着を待った。

 彦さんと合流し、今日島入りした二人を出迎える。
 彦さんに使わなくなった水筒を預けた。今後は、熱中症対策も必要なくなるだろう。
 彦さんと、最終便で島入りしたMさん、Sさんにハイタッチで再び見送ってもらった。

 17時15分、夕食は、マリンストアの2階、「かふか」で食べることにした。ホッケのちゃんちゃん焼き定食活ウニが付いて1500円。「ちどり」よりお値打ちだ。目の前の炭火でホッケを焼き、焼けたところから味噌とネギを混ぜて食べる。皮を鍋代わりに、破らないで食べるのがコツだそうだ。皮は最後に切ってくれ、煎餅のようにして食べる。殻付のウニは流石に新鮮で、醤油は要らない。

 ホッケのチャンチャン焼き  活きウニ

 隣の席に若い女性が座ったので声をかけた。
 「今日はどこを歩いたんですか?」
 「私、観光客じゃなくて、近くのホテルで働いてるんです。」
 「あっ、それは失礼しました。」
 聞くと、女性は「ホテル花れぶん」で夏の間働いているそうだ。忙しくて、いまだに礼文島の北の方へは行っていないらしい。
 「いい所ですよ。星も景色も綺麗だし。是非行ってください。」
 俺は、島一周を歩いていること等を話した後、席を立った。この出会いは、後からちょっとした伏線になる。

 17時55分、「かふか」を出発。けっこうゆっくりしてしまった。座っていたときは気付かなかったが、足の痛みが本格化している。特に足首が痛んだ。
 ここまでで、距離的には半分位だろうか。

 ホッケのチャンチャン焼き定食活きウニ付き  セイコーマート

 18時15分、島唯一のセイコーマート。栄養剤とスポーツドリンクを購入し、栄養剤はその場で一気飲みする。暗くなり始めたため、キャップライトを点灯する。

 夜の帳がおりた。ここからが正念場、後半戦突入だ。

 暗くなった道を行く  キャップライト点灯

 18時40分、香深井

 18時49分、見内神社。利尻富士は、雲で隠れている。麓の街明かりがキラキラと光っていた。

 18時52分、礼文町総合体育館「潮騒ドーム」。剣道の練習をしていた。

 見内神社  潮騒ドーム

 18時55分、香深井郵便局

 19時05分、駐車公園。トイレ休憩する。

 香深井郵便局  利尻富士

 微かに見える利尻富士  駐車公園

 街灯が少ないので、ヘッドライトの灯りが頼りだ。特に、覆道(ふくどう トンネルみたいなもの)を通過する時は本当に真っ暗で、恐怖心さえ覚える。

 19時26分、起登臼(きとうす)。車がスピードを出していて怖い。むこうもきっと怖いだろう。夜の早い礼文で、今頃歩いているのは俺だけだ。

 覆道  起登臼

 闇の中の利尻富士  夜道を行く

 19時41分、金環日食観測記念碑

 19時50分、ウニむき体験センター

 ウニむき体験センター  内路

 19時58分、内路。暗闇の中を歩くと、全く進んでいないような錯覚に襲われる。1kmって、こんなに長かっただろうか。

 20時13分、礼文岳登山口。閉まった売店前に座り、休憩していると、男性が奥から出てきて声を掛けてきた。
 「今下りて来たの?」
 礼文岳の登山者だと思ったらしい。
 「今、スコトン岬まで歩いているんです。」
 島を一周していることを説明すると、男性は、
 「朝までなら着けるよ。頑張って。」
 と励ましながら去っていった。他愛のない会話だったが、久し振りに人と話して元気づけられた。

 礼文岳登山口  金田岬への分岐標識

 周囲は真っ暗だ。海沿いを歩くので、波の音だけが不気味に大きい。時々、民家の前を通ると、窓から暖かそうな団欒が見え、「俺は遠い礼文まで来て何やってるんだろう?」と自問自答してしまう。

 20時56分、上泊。コースは分岐し、金田岬方面へ。単純にスコトン岬を目指すなら、ここから10km程度だが、24時間コースは礼文島の北東側の岬・金田岬を経由しなくてはならない。そうしないと1周したことにならないからだ。ここが、24時間コースの難易度を上げている。

 上泊分岐  船泊まで6キロ

 星観荘へ2回目の電話連絡をする。電話の向こうから、「頑張れ〜!」と声援が聞こえ、大いに励まされる。

 ここからが長い。周囲が暗いため、ちょっとした段差に足をとられて痛めそうになる。

 民家にあった変なオブジェ1  民家にあった変なオブジェ2

 真っ暗な中、金田岬の灯台を目指し、歩く。しかし、遠くに見える灯りを頼りに歩くと、ただの街灯だったり、他の照明だったり、偽灯台に騙され続けて心が折れそうになる。これを、人呼んで「金田岬地獄」というらしい。

 わかりにくいが金田岬灯台  食堂「あとい」

 22時20分、ついに金田岬に到着。着いてみたら何のことはないのだが、上泊の分岐から1時間半近く歩いたことになる。本当に長かった。

 対面の海にスコトンの灯り  旧星観荘

 22時33分、礼文空港入口、旧星観荘前。星観荘に、今日最後の連絡を入れる。
 彦さんいわく、「早いね!後、2時間位で着いちゃうよ。」
 足の状態から2時間は無理かもしれないが、なるべく早く着きたい。早くゴールして休みたかった。

 22時59分、船泊。祭りの後のせいか、町中提灯がぶら下がっている。歩道に腰掛け、澄海岬の売店でもらったバナナを食べる。涙が出るほど美味かった。

 船泊上空は晴天。幾筋も、流れる星が見えた。

 澄海岬売店でもらったバナナ  船泊集落

 ここからがまた長い。海を挟んだ反対側の岬の灯りを目指し歩く。まだあれだけあるのか…。泣きたくなった。

 双葉食堂前  スコトンまで8キロ

 スコトンまで約8キロ。途中で栄養剤やウィダーインゼリーを摂取しながら、誤魔化し誤魔化し、歩く。  頭に響くのは、何故か桃岩荘で聴いた「石狩挽歌」

 「海猫(ゴメ)が鳴くからぁ〜 鰊が来るとぉ〜♪」
 朦朧とする意識の中で、石狩挽歌を口ずさみながらトボトボと歩く。
 「オンボロロ〜 オンボロボロロ〜♪」
 ボロボロなのは俺の方だよ!心の中で突っ込んでみる。

 23時35分、浜中。足だけでなく、リュックの紐が肩に食い込んで痛む。

 浜中分岐  対岸の船泊の灯り

 何もない海沿いの道端で日付が変わった。





to be continued…


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