旅日記北海道編2008中編 独歩(2)





第4日目 礼文島1周24時間コース完歩とウッドデッキ茶会




月10日零時20分、江戸屋、スコトンとトド島展望台との分岐。
足のいたる所が痛く、重い。ストックも駆使しながら、ひたすら前進する。不思議なことに、なぜか眠さは全くない。昨日は4時間位しか寝ていないのだが。

 星観荘前  スコトン

 1時00分、ついに星観荘前通過。できることならベッドへ直行したかった。だが、まだゴールではない。

 上泊分岐  スコトン岬まで300メートル

 スコトン岬まで300メートルの標識が見えた。進まない足がもどかしい。

 駐車場を抜け、震える足で岬への階段を下りていく。真っ暗だ。キャップライトで足元を慎重に照らす。


   手だけの記念撮影




 1時15分、ゴールのスコトン岬「最北限の地」碑にタッチする。ついに礼文島1周完歩だ。

 8時間コースが「愛とロマンの」と冠するなら、24時間は「孤独と忍耐の24時間コース」とでもいえるだろうか。

 泣けるほど感動するかと思ったが、涙は出なかった。ただ、静かに達成感が満ち溢れていた。

 碑の近くは風が強く、セルフタイマーで撮影するのが不安だったため諦める。そのため、ゴールの写真は手しか写っていない。

 気付いたら、昨日の朝から写真を300枚位撮影していた。写真を撮っていなかったら、もう30分位はゴールが早かったかもしれない。

 最北限の碑  満身創痍

 さて、これからどうするか…。俺は、真っ暗で無人のスコトン岬で、驚く程冷静に今後のことを考えていた。今宿に帰っても、皆寝静まっているし、何も断らずに宿に入るのも気がひけた。
 よし!皆が起床する6時位まで待って、感動的に出迎えてもらおう。

 スコトン岬売店前の、比較的風の弱い所にシートを敷き、携帯用防寒シートを被って寝ることにした。

 しかし、海風は容赦なく吹き抜け、蚊はブンブンと寄ってくる。目を閉じても全く眠れない。
 さらに、たまに走り屋らしき車が猛スピードで岬の方へ突っ込んで行き、猛スピードでバックして帰って行く。
 恐ろしい。因縁つけられたらたまったものじゃない。

 その上、衣類にしみ込んだ汗が冷やされ、寒くてガタガタ震えてきた。このままでは確実に風邪を引く。

   背に腹はかえられない。

 彦さんの起きる4時を待って電話をかけ、帰ることにする。
 振り返ってみると、24時間コース終盤で、暗闇の中で2時間以上もがいていたこの時間が一番辛かったかもしれない。

 もう夜明けが近い。東の空が、薄紫色に染まっていた。

 疲れた足どり  夜明けのスコトン岬1

 夜明けのスコトン岬2  夜明けのスコトン岬3

 夜明けのスコトン岬4  夜明けのスコトン岬5

 夜明けのスコトン岬6  星観荘へ

 物音を立てないように気をつけて、星観荘の玄関に入る。
 「おかえり。お疲れ様〜。」
 彦さん1人の出迎えによる静かなゴールになった。

 スコトン岬のゴールまで17時間45分。まずまずのタイムで礼文島一周を達成した。感動も大きいが、まずは暖かいベッドで横になりたかった。

 彦さんがシャワーを使えるようにしてくれた。
 熱いシャワーを浴びる。生き返った気分だった。

 そのままベッドに直行し、1時間程仮眠する。



 午前6時30分。普通に朝食を食べている俺を見て、皆驚いていた。

 「あんまり爽やかに朝食を食べてるんで、びっくりしました。」

 皆が言うように、1時間寝ただけでかなりすっきりしている。足の痛みは別にして。

 それにしても、歩いた後の朝食の美味いこと!朝はあまり食べない俺だが、珍しくおかわりまでした。

 8月10日朝食  祝福の儀式1

 祝福の儀式2  祝福の儀式3

 祝福の儀式4  祝福の儀式5

 祝福の儀式6  祝福の儀式7

 朝食後、ブラックホールで、改めて24時間コース完歩の祝福の儀式をしてもらう。全員とハイタッチし、祝福の声をかけてもらった。

 ありがとう、本当にありがとう!!
 俺は暖かな気持ちで満たされていた。

   24時間コース完歩記念



 今日も3人、24時間コースを歩く人がいて、続いて見送りの儀式になる。

 見送り  見送りの儀式

 リーダーの大門さんは、今年3回24時間を歩くという猛者で、今回は今年2回目の挑戦だった。今回俺が24時間を歩く際も、色々と情報提供してくれた方だ。
 大門さん達を見送った後は、Iさん、キャサリンさん達のお別れの儀式。その後、港への見送りに同行する。

 お別れ  Iさん達を見送る

 「疲れているんだから待ってなさい。」
 と、皆に何度も言われたが、俺を応援してくれたIさん、キャサリンさん達をどうしても見送りたかった。

 満員のスターライナーに乗り込み、港へ向かう。

 星観荘の見送りは、タラップの横に並び、一人ずつ握手していく。
 子供を連れたファミリー、キャサリンさんとご主人、Iさん。次々に乗船していく。本当にありがとう!

 甲板に立ったIさん達に、見送る側の俺達は一人ずつ声をかけていく。

 タラップで握手  船を見上げる

 船を追う  遠ざかる船

 「お気をつけて!行ってらっしゃ〜い!!」
 離れていく船に合わせ皆駆け出すが、俺は足が痛くて走れなかった。後をヨタヨタとついて行く。
 「行ってらっしゃ〜い!」
 船が見えなくなるまで、俺達は何度も何度も叫んだ。

 ふと、数日後には俺も見送られる側になるのだと思い、ちょっとブルーになった。

 この日は、一便で名古屋のしおりさん、札幌のみかっちさんが島入りした。
 星観荘への帰り道にコンビニに寄ってもらい、昼食のパンを買っておく。
 あややさん達は各々途中下車し、それぞれのコースへ。俺は星観荘へ帰り、アルタイルへ。

 足が痛む。ベッドを下の段にしていて本当に良かった。

 ベッドに直行した俺は、数十秒もかからずに眠りに落ちた。



 午後1時起床。ブラックホールで、買っておいたパンをひろげ昼食にする。

 たまった洗濯物を一気に洗った。今日は旅の中日。ゆっくり休養することにしよう。

 その後、ウッドデッキに行ってお茶を点てる準備をする。赤い毛氈は手製のアウトドア毛氈だ。キャンプ用の薄い銀マットに赤布を貼り付けたもの。製作時間は3時間かかった。
 さらに、ゴロタ浜で拾ってきた流木を点前座に置く。

 ガスコンロにチタン製のケトルを乗せ、湯を沸かした。

 星観荘  ウッドデッキにて

 思ったより風が強く、油断すると風で抹茶が飛び散ってしまう。また、お湯が沸いてもすぐに冷めてしまう。逆に、沸かしっぱなしだと熱くなり過ぎる。
 何度も試して、点前の途中はガスを止めておき、お茶を点てる直前に加熱すると丁度良いことに気付いた。

 海に向かって独り、静かにお茶を点てる。
 なんて優雅な時間なんだろう。

 実は、この時の様子を、彦さんが遠くから見ていて、
 「独特の雰囲気で、声をかけられなかったよ。」
 と、後で言われた。

 お茶を点てたり、たまに横になったりしながらまったりした時間を過ごした。

 星観荘ウッドデッキ茶会  ウッドデッキ茶会

 あややさん達をお客に  お菓子 マンゴー糖

 やがて、宿の娘さんやヘルパーさん、あややさん達がトレッキングから帰ってきたので、順番に茶を点てていく。

 その中に一人、元気そうなお爺ちゃんがいた。…その人、Sさんは、徒歩で日本を海沿いに1周しているという。
 「人生死ぬまで元気」が信条で、既に本州沿岸はクリアし、今は北海道を回っているという。当然、礼文島も徒歩で一周しており、今日は、礼文島西海岸を南から星観荘まで歩いてきたそうだ。すごい人がいたものだ。

 皆に喜んでもらえて有意義な時間を過ごすことができた。



 この日のお茶会を会記風にすると、

8月10日 星観荘ウッドデッキ茶会



瓶掛 チタン製ケトル

   southfield製ガスコンロ

結界 ゴロタ浜の流木を以て作る

茶器 春慶塗 平棗

茶杓 銘 宝船 拙作

茶碗 志野 森岡なつ作

替 Wedgwood night & day

建水 ステンレス製ボウル 柳宗理デザイン

茶巾筒 銀

菓子 マンゴー糖 沖縄土産

菓子器 木地 四方盆



 こんなところか。



 8月10日の夕焼け  ホッケのチャンチャン焼き

 その後、お楽しみの夕食になる。
 この日のメニューは、

 刺身(柳の舞、海老)
 ホッケちゃんちゃん焼き
 ウニ
 酢烏賊
 昆布巻き
 トマトとブロッコリーのサラダ
 西瓜
 海老頭の味噌汁

 それに、今日もダブルウニ丼を追加した。

 甘エビの刺身は、冷凍ものではなく生だった。めったに手に入らないだけあって、甘みがあり美味だった。
 ホッケのちゃんちゃん焼きは、昨日フェリーターミナルで食べたので連続になってしまったが、星観荘のものはキャベツ入りでまた違った美味さだ。
 海老の頭入りの味噌汁も、出汁がよく出ていて絶品だった。

 今日は夕日は雲に隠れてしまったが、沈みゆく日が雲を照り返し、赤紫色の綺麗な夕焼けになった。

 8月10日の夕日  8月10日の夕焼け

 8月10日の夕焼け  夕暮れの星観荘

24時間コース完歩記念  ミーティングでは、24時間コースの感想を話して、改めてお祝いしてもらった。

 「どこで仮眠とろうとしたの?」と彦さん。
 「スコトンの売店の前です。」
 「みんな、けっこうバス停の小屋の中で寝るんだよ。夜風がしのげるし。」
 「えっ!?知らなかった!」

 それは情報不足だった。ついでにいうと、前半の山道はトレッキングシューズを履き、後半のアスファルト上はスニーカーに履き替える方法もあるそうだ。全然、考えもしなかった。荷物が多くなるから、それが最善といえるかどうかはわからないが。

 さらに、24時間コース完歩の記念に絵葉書をいただいた。この日の同宿者にメッセージを書いてもらい、後から自分で住所氏名を書けば、後から彦さんが送ってくれるそうだ。これはいい記念になった。

 ミーティング後の飲み会では、みかっちさんが持ってきてくれたリキュールをいただき、いい気分になった。

 何となく話の流れで、明日は桃知コースを歩いてから、皆で野点をすることになった。まだ足の痛みは癒えないが大丈夫だろうか。まぁ、なるようになるだろう。今の俺は、疲れと酔いで異様にテンションが高い。

 少し風に当たろうと外に出ると、やや雲がかかっていたが綺麗な星空だ。遠くの海には漁火が見える。

 明日もいい天気でありますように。

 8月10日記念撮影  夜の星観荘

 8月10日の漁火  漁火





to be continued…


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