旅日記北海道編2008後編 茶遊(1)





第5日目 桃岩展望台野点




前6時起床。熟睡し、気分的にはすっきりしているが、足の痛みだけは癒えていなかった。
まぁ、あれだけ歩いたのだから急には治らないだろう。

 昨日、24時間コースに出発した大門さん達三人が帰ってきそうだというので、ウッドデッキで待つことにした。

 三人とも、疲れた表情ながら、しっかりした足取りで戻ってきた。テープを張り、皆でゴールを祝う。

 これが正式な出迎えなのだろう。俺も大勢の出迎えで、テープを切ってゴールしたかった。

  

  

 今日は皆のリクエストにこたえ、桃知コース(フラワーロード)に野点セットを持って行くことになった。

 フェリーターミナルで、1便で島抜けするガッツさんを見送った後、バスで島の最南の集落、知床へ向かう。今年からバスのダイヤが変わり、見送りの後でも知床行きのバスに乗れるようになった。

  

  

 野点ツアーのメンバーは、俺とあややさん、みかっちさん、しおりさん、Bさん、Mさんの計6名。

 野点で必需品の毛氈と水を、別のバッグに入れて持っていたのだが、皆が気を遣ってくれ、ジャンケンをしながら交代で持っていくことになった。

 電柱等を目印を決め、ジャンケンしながら坂道をゆっくり登る。大体、電柱2本を目安にジャンケンしていく。俺は最初、3回に1度位の確立で負けた。

 皆、平均して負けるのだが、何故かあややさんだけ負けなかった。

 「師匠は、みんなに持ってもらってるって後ろめたさを感じるから負けるんですよ。」

 いつの間にか、俺は皆から師匠と呼ばれるようになっていた。

  

  

  

 24時間コースの時にこのコースは歩いているのだが、余裕がなかったせいか見落としている花も多かった。

 特に、レブンウスユキソウが比較的原型を残して残っていたのが嬉しかった。

  

  

  

 「秘密の花園」と呼ばれる場所にも寄り道する。
 ここは、海が穏やかならアザラシの姿もよく見られる場所だ。生憎、海は荒れていてアザラシはいなかった。

  

  

 野点をする場所を探しながら、結局、桃岩展望台まで来てしまった。

 ここまでに数十回に渡るジャンケンを繰り広げた。
 後半は、倶知安のMさんが連続で負けていた。結局、あややさんは一敗しかしなかった。

  

  

 他の観光客に邪魔にならない場所を選んで野点の準備をする。

 ガイドがツアー客を案内しているのを横目にお茶を点て始める。

  

  

8月11日 桃岩展望台茶会 会記

 瓶掛 チタン製ケトル southfield製ガスコンロ

 茶器 義山

 茶杓 銘 海風 拙作

 茶碗 黄瀬戸 森岡なつ作

 替 Wedgwood night & day

 建水 ステンレス製ボウル 柳宗理デザイン

 茶巾筒 銀

 菓子 凍ての華

 菓子器 木地 四方盆

  

  

  

 風が強く、苦戦しながらも全員分のお茶を点て、最後に自服した。

 流石に景色の良い所で飲むお茶は美味い。

 集中してお茶を点てていたので気付かなかったが、毛氈の周辺にはかなりギャラリーが集まっていたらしい。

 皆が言うには、ガイドさんが、「あれが桃岩です。」等と説明している横で、俺が「桃民」トレーナーを着てお茶を点てている光景は、かなりシュールだったという。

 野点後は、道具も毛氈も、皆が分散させて持ってくれ、身軽になった。

 その後、野辺の花を眺めつつ、昼食を食べに元地へ向かう。 大した距離ではないのだが、まだ足に昨日のダメージが残っていて歩くのが辛い。皆に遅れをとらないように、やっとのことで佐藤売店に到着した。

  

    

 ウニ丼(1000円)と焼きウニ(800円)を注文し、生と焼きのダブル丼にして食べる。焼いたウニも風味が増して美味い。

 皆、ウニや帆立等をつまみに一杯やっている。俺は酒は遠慮しておいた。そういえば、今日は彦さんが夕食は「タコカレー」にすると言っていた。星観荘のタコカレーは、常連がほとんどの時しかやってくれない幻のメニューといわれている。俺もまだ食べたことはなかった。

  

  

  

 佐藤売店でまったりしていると、身長190センチ、幅1メートルはあろうかという大男が近づいてきた。男は、こっちのテーブル前で立ち止まると、満面の笑みを浮かべた。

 「これからどうするんすか〜?」

 俺は、あまりに親しげな様子に、対面に座っているBさんの知り合いかと思った。だがBさんも、あややさんも、「?」って顔をしている。

 「4時3分のバスで帰りますが。」

 あややさんが答えると、今度は男が「?」という顔になる。

 「あれ?桃岩の人じゃ…。」

 皆、やっと理解した。店の入口に背を向けて座っている俺は、「桃民」トレーナーを着ている。男はその文字を見て、俺達全員を桃岩荘の宿泊客だと思ったらしい。

 「いや、その人着てるだけですから。」

 あややさんが慌てて否定すると、男は残念そうに去って行った。

 俺が知らないうちに誤解の原因を作っていたのだった。皆で爆笑した。

   その後、バスで香深に戻った。BさんとMさんは、港の二つ前の停留所で降りた。歩いてお腹を空かせ、タコカレーに備えるのだという。二人にそこまでさせるタコカレーとは一体…。

 みかっちさんとしおりさんは買い物へ。
 俺とあややさんは、ホテル礼文であややさんお薦めの黒ゴマソフトを食べた。ゴマが香り高く、なめらかで、驚く程美味だった。

 今夜の星観荘の夕食は、皆が心待ちにしていた幻のメニュー、タコカレーをはじめ盛り沢山だった。

 刺身(秋刀魚、帆立)
 鱈のフライ
 ウニ
 じゅんさい酢の物
 人参サラダ
 タコカレー
 コーヒーゼリー

  

 タコカレーは、軟らかいタコがゴロゴロ入っていて美味だった。このタコを軟らかくするのには、かなりの手間がかかっているそうだ。

 付け合わせの人参サラダも、バナナが入っていて甘味があり美味しい。

 「刺身はカレーに合わないので、先に食べてください。」と彦さん。

 カレーの日も、品数が減らないのが嬉しかった。

 美味しい物を沢山食べられ、幸せな一日だった。



to be continued…


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