旅日記北海道編2009 孤高(2)





第2日目 利尻岳登山決行




前3時起床。
パンとソフトカツゲンで朝食を済ませ、手早く身支度をする。
 フロントで待っていると、おっちゃん2人もリュックを背負い、階段をおりて来た。年季の入った装備を身に着け、二人ともベテランらしい雰囲気を醸し出している。
 弁当を受け取り、午前4時、登山口に送迎してもらう。


     

 おっちゃん達とはスタートは一緒だが、基本的にはそれぞれのペースで登っていく。
 靴紐を締めなおし、軽くストレッチをした。
 まだ夜明け前で、周囲は暗い。
 待ってろよ、利尻岳!気持ちが高まってきた。

 「私はゆっくり行くから、どうぞ置いて行って下さい。」と言っていたMさんは、あっという間に先に行ってしまった。思ったとおりのパターンで、思わず苦笑する。

 気難しそうなYさんは、俺の後ろを歩いていた。俺は俺で、無理せず歩こう。

 4時13分、「甘露泉水」。ここは3合目にあたる。俺は以前の旅で、ここまでは来ている。

     

 水を補給できるのは、ここで最後だ。
 冷たい湧き水を水筒に入れておいた。
 今回、俺が持っている水分は、スポーツドリンク1.5リットルと、甘露泉水1リットルの2.5リットルということになる(他に、ウィダーインゼリー2パック、栄養ドリンク1本)。

     

     

 トドマツやエゾマツの暗い林道を進む。木の根や石はあるが、歩きやすい道だ。

 4時38分、4合目(標高430m)到着。野鳥の森といわれる場所だ。

 朝日が林道を染めていた。夜明けだ。

     

 ここから道が細くなり、坂がやや急になる。石がゴロゴロ転がっていて、早速歩きにくい。既に暑く、フリースがもう役目を終えた。

     

     

 5時12分、5合目(630m)。少し開けた場所から眺めると、雲の向こうに礼文島が見えた。ジグザグの坂道が続く。

     

     

 5時40分、6合目(770m)。第一見晴らし。遠くに「ペシ岬」が見える。相変わらず石の多い道だ。

     

     

 5時51分、6.5合目トイレブース初登場だ。ここは携帯トイレを使用する場所だ。

     

 この辺りから、登りが急になる。
 森林限界となり、周囲はハイマツが群生している。

 6時07分、7合目(910m)七曲。その名の通り、曲がりくねった道を登っていく。

     

     

     

 背の低い木が道に覆い被さっているので、前傾姿勢で登らなければならず、腰が痛い。
 それにしても今日の天気は最高だ。その代わり、かなり暑いのだが。
 登山道は大きめの石が転がり、歩きにくい。

     

     

 6時49分、第二見晴らし。遠くに「姫沼」が見える。8合目の長官山はまだまだ先だ。
 汗が滝のように流れ、早いペースでスポーツドリンクが消費されていく。

     

     

     

 午前7時10分、8合目(1218m)、「長官山」

 ここは利尻山頂の横にあるピークで、かつて北海道長官が利尻岳を視察に来た際、ここで諦めたため長官山というらしい。
 岩場を駆け上がると、目指している山頂が、ドーンと目の前にそびえ立った。

     

     

 凄い!

 山頂は雲一つかかっておらず、雪渓が美しい。

     

     

 さらに歩くと、赤い屋根の小屋が見えてきた。

 7時31分、「利尻岳山小屋」。ここは、避難小屋で、基本的に緊急時に使用するそうだ。

     

     

     

     

 登山道には花の数が増えてきた。リシリリンドウやエゾウメバチソウ、イブキトラノオ、リシリブシ等が咲いている。

     

     

     

     

 8時04分、9合目(1420m)。

 看板には、「ここからが正念場」とある。まさにそのとおりで、ここからの登りは異様にハードだった。

 まず、足場が違う。軽石のようなもろい砂礫で、3歩登ると1歩登滑り落ちてしまう。
 両手両足を駆使し、所々にあるロープに捕まって登らなければならない。これには非常に体力が必要だった。

     

     

     

     

 利尻岳が「難易度 中級から上級の山」と位置付けられているのは、まさにこの9合目以降のハードさからだろう。

 8時44分、沓形コースとの分岐点。足場は相変わらず悪く、すぐにズルズルと滑り落ちそうになる。

     

     

     

     

 9時05分、雲の上に浮かんだ「ローソク岩」が見えた。圧倒される光景で、思わず連続してシャッターを切る。先が見えてきた!

     

     

 9時10分、ついに山頂(1719m)に到着した!!

 利尻岳は海に浮かぶ独立峰なので、周囲全てを見渡せる。
 礼文島や稚内方面はもちろん、遠くサハリンまで見ることができた。
 特に、ここから見るローソク岩は美しく、誇張ではなく本当に鳥肌が立った。

 ここで早めの昼食にする。宿で持たせてくれた弁当は、なかなか豪華でボリュームがあった。特にバナナが付いているのが嬉しい。

     

     

     

     

 さらに花とローソク岩をバックにお茶を点てた。このために、重い思いをして茶籠セットやガス等を持ってきたのだ。
 自作のコンパクト毛氈の上で、甘露泉水を使って点てたお茶は、今まで飲んだどの薄茶より美味だった。




8月6日 於 利尻岳山頂



瓶掛 チタン製ケトル

   southfield製ガスコンロ

茶器 義山

茶杓 銘 夏山 拙作

茶碗 黄瀬戸 森岡なつ作

建水 スタッキングマグ 雪峰 スノーピーク製

茶巾筒 銀

菓子 二人静 両口屋製

菓子器 木地 四方盆


 天気も素晴らしく、上がってくる人も少ないので、山頂には1時間半も滞在した。



 いつまでも山頂にいたい気分だが、自分で歩かない限りは宿には帰れないので午前10時29分、下山開始する。

 今登ってきた、あの9合目を降りると思うと、ゾッとした。実際、下りの方が怪我が多いのだ。途中、何度も尻餅をつきながら、ズルズルと下りて行った。

     

     

     

     

     

 8合目の非難小屋では、足がつったという男性が休んでいた。ここでリタイヤするという。
 8合目付近でリタイヤする人もけっこういるようだ。

     

     

     

 下りについては省略するが、下り道もかなりハードだったことを付記しておく。

 木の枝に何度も頭をぶつけ、滑って尻餅をついた。
 そして、暑さ。汗で、シャツもズボンもスコールを浴びたようにびしょ濡れになった。

 1合下りる毎に、栄養剤やウィダーインゼリー等を摂取して自分へのご褒美として、誤魔化し誤魔化し下りていく。

     

     

 7号目から6合目までが異様に長いと思っていたら、6合目に気付かず通り過ぎていて5合目に到着した。ちょっと得した気分だった。

 午後2時14分、3合目。甘露泉水の看板が見えた。

     

 ここまでくると、心底ほっとする。
 実は、持ってきたスポーツドリンク3本(1500ml)と甘露泉水1リットルをほぼ飲みきっていたのだ。

 水場に駆け寄り、湧き水をペットボトルに詰め、一気飲みした。
 甘露泉水までは、家族連れが水を汲みに来ることが多いらしく、けっこう賑わっていた。

     

 午後2時30分、ついに登山口に着いた。宿に電話し、迎えにきてもらう。
 ちなみに俺の携帯はauだが、山頂を含め登山中は、ほぼアンテナ三本立っていた。

 途中、「利尻富士温泉」で降ろしてもらった。
 予め渡しておいた着替えを受け取り、荷物は宿まで運んでもらう。
 入浴を終えたらまた迎えに来てくれるのだ。マルゼンは、非常にまめに送迎してくれる。

     

 利尻富士温泉は客も少なく、ほぼ貸切状態で入浴できた。
 露天風呂からは、今登ったばかりの利尻岳が見えた。
 あんな山を自力で登って、下りてきたのだ。物凄い達成感だった。

 入浴を終えて、生まれ変わったようにさっぱりした。
 休憩室で、函館開港150年記念ラベルのコーラを一気飲みする。酒よりも炭酸飲料を身体が欲していたのだ。

 身体は思ったよりダメージが少なかった。足の痛みもほとんどないし、靴擦れもない。ただ、日焼け止めクリームが汗で流れてしまい、顔がヒリヒリした。ちなみに体重を図ったら、2.5Kg減っていた。

 再度宿に電話し、迎えに来てもらう。宿に帰り洗濯を済ませると、夕食の時間になった。


 連泊者はメニューが変わり、海鮮丼がメインになる。俺は追加料金を払ってウニ丼にしてもらう。他に、海鮮鍋、焼き帆立、メバルの煮付け、焼きイカ、モズク等。デザートはメロンだ。最高級のバフンウニを使ったウニ丼の味は格別だった。

     

     

 利尻岳は、まだ雲一つかかっていなかった。これほど終日、利尻岳が見えているのは珍しいそうだ。今日を登山の日に設定して大正解だった。

     

 今夜は利尻最後の夜だ。セイコーマートで買った安チューハイで、独り乾杯した。



 夜、ふと思い立ち、外へ。今日は満月だった筈だ。

 思った通り月が綺麗で、その横に利尻岳が黒く浮かび上がっていた。念願の「月夜の利尻富士」を見ることができた。      

     





to be continued…


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