旅日記北海道編2006 @  復興 (6)





第4日目  旅の終わりも五月雨とともに




終日の朝が呆気なくやってきた。空はどんよりとした雲に覆われている。

 ホテルをチェックアウトした俺は、その足で函館朝市に向かった。今日の朝食は、「きくよ食堂」で食べることにした。きくよ食堂は、旅の初日に行ったすずや食堂と同じく、函館朝市を代表する食堂だ。ちなみに、俺は今年の初めにも一回訪れている。
 カウンター席に座り、巴丼を注文する。巴丼の三色は、ウニ、イクラ、ホタテで、きくよ食堂では一番オーソドックスで、人気メニューでもある。
 ウニは海水ウニを使っていて、癖がなく濃厚だ。イクラも美味い。だが、特筆すべきはホタテの貝柱だ。身が厚くて甘みがあり、歯で噛み切るときの弾力が心地いい。炭火で炊いたというご飯も、ツヤツヤとした炊き上がりで美味い。この巴丼は、クーポンで割引して1,400円程度とけっこうお得で、迷った時はお薦めである。

巴丼 ランサーセディア

 今日は、フライトまでの時間を目一杯使うために、レンタカーを借りることにした。
 わずかな時間だが、今日の相棒は三菱のランサーセディアだ。
 とりあえず大沼公園を目指し、北へと車を走らせる。大沼国定公園は、駒ケ岳と大沼や小沼、蓴菜沼(じゅんさいぬま)などを含む、全国でも最も歴史ある自然公園の1つだ。大沼と小沼は駒ヶ岳の噴火でできた湖で、その景観は新日本三景の一つに数えられている。
 小沼に差し掛かったころ、フロントガラスをぽつりぽつりと雨が叩いた。ついに降ってきたか。

小沼 大沼1

 小雨の煙る大沼に車を停め、散策する。大沼に浮かんだ多数の小島には橋が架かり、島巡りをすることができる。晴れていれば駒ケ岳がよく見える筈だが、今は厚い雲に覆われている。だが、雨が糸を引くように湖面に降る情景は、それはそれで趣があった。

大沼2 大沼3

大沼4 大沼5

 時間もあまりないので、元祖大沼だんごの店「沼の家(ぬまのや)」で土産を買う。俺はここでしか買えない大沼だんごがけっこう好きだ。餡と正油、胡麻と正油の2種類があり、小サイズは一箱315円ととても安い。

沼の家 大沼だんご

 大沼から東に向かう。途中、「山川牧場ミルクプラント」の看板を見つけて寄り道した。一瞬覗いた晴れ間から駒ケ岳が見えた。ローストビーフサンド(800円)と牛乳(80円)を買った。コクのある牛乳はその場で飲み、ローストビーフサンドは昼食に取っておいた。

山川牧場ミルクプラント 駒ケ岳が見えた

ローストビーフサンド 牛乳

 晴れたり曇ったり、天候が安定しない。だが、雄大な駒ケ岳を眺めながらのドライブはなかなか気持ちいい。

 鹿部町から国道278号線を海沿いに南下し、今日最大の目的地「水無海浜温泉」を目指した。

北海道らしい道を行く 牧草地と駒ケ岳

 水無海浜温泉は、椴法華村(とどほっけむら)の海岸にある無料の露天風呂だ。海岸にある温泉というと、知床の瀬石(せせき)を思い出すが、それと同様に満潮でも干潮でも入れない。潮の満ち引きの時間までは調べていなかったので、入れるかどうかは一か八かだ。

 海岸の温泉の筈だが、坂を上ったり下りたりと複雑で、本当に道が合っているのか不安になる。けっこう忙しい行程だ。道が細くなり、やっとのことで目的地に辿り着いた。

水無海浜温泉脱衣場 水無海浜温泉遠景

 駐車場に車を停め、海岸へ歩き出す。岩だらけの海岸に、苔むした長方形の浴槽が見えた。潮が引き過ぎていると熱すぎて入れないそうだが、果たして…。
 湯の温度を確認すると、熱いが入れない程ではない。近くに簡素な脱衣場があったが、誰もいないのでその場で全裸になる。

温泉内 ワイルドな温泉に入る

 浴槽の中は石がゴロゴロと転がり、茹った海草が浮いていてなかなかワイルドだ。恐る恐る入ってみると、けっこう熱い。長湯は無理そうだ。湯の量が少なく、全身浸かれないのも残念だ。だが、海が目の前というロケーションは素晴らしい。

 今日は、この温泉に入るためにレンタカーを借りたようなものだ。よくよく考えると、けっこう贅沢な無料温泉である。

 滞在時間は残りわずかだ。函館空港を目指し、車を走らせる。
 途中、ハセガワストアで北海道限定のカップめんやマンゴスチンカツゲンを買いだめした後、余裕をもって函館空港に到着した。

北海道限定のカップめんやマンゴスチンカツゲン 空港で買ったクリームパフェチーズ

 旅の終わりはいつも感傷的になる。今回は、3泊4日と短い日程だったので、尚更名残惜しい。俺は空港のベンチに腰を下ろした。
 絶品のローストビーフサンドと、売店で買ったクリームパフェレアチーズに舌鼓を打ちながら、俺は今回の旅を思い返していた。

 今回、奥尻島に行けたことは大きな収穫だった。美しい自然に美味しい食べ物、走って気持ちのいい道。この小さな島には、沢山の魅力が凝縮されていた。北海道の好きな場所がまた一つ増えてしまった。
 そして、何より温かい人々。震災を力を合わせて乗り越え復興させた、強く魅力的な人々に、俺はまた会いに行きたいと思った。

 やわらかな五月の雨が再び降り始め、滑走路を静かに濡らしていた。


 後日。

 奥尻のみかげ石海岸で拾った流木で茶杓を削った。銘は、「七転八起(ななころびやおき)」。震災の犠牲者の方々の冥福を祈るとともに、震災を含め、様々な困難を乗り越えてきた島の皆さんに敬意を表して。

 いつまでも、平和で美しい島でありますように…。



旅日記北海道編2006@ 復興





鍋つる岩 さらば奥尻





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