旅日記北海道編2006 @ 復興 (5)第3日目A 感謝 島の滞在時間はあと僅かだ。残り時間、目一杯奥尻を楽しもうと、俺は再び原付のエンジンをかけた。
幌内から復興の森に向かう道は、八十八曲りと呼ばれる曲がりくねった峠道だ。見通しが悪いが、木々や山々の隙間からのぞく海が美しい。いい景色があれば、その都度停まって眺められるのが原付の良いところだ。だが、絶景が多すぎてなかなか前へ進めない。
たっぷりと時間をかけて峠道を走り、俺は再び球島山展望台にやって来た。 吹き抜ける風が心地いい。昨日と同様、霞がかかったような空と海なので、あまりクリアな展望は望めなかったが、それでも気持ちのいい景色だ。俺は名残を惜しむように、奥尻の空気を胸いっぱい吸い込んだ。
サムーンが見えてきた。奥尻地区に戻ってきたが、原付の返却時間まで時間があったため、俺は昼食を食べることにした。奥尻町の小林レンタカーからも近い「うに丼通り」に行ってみる。ウニ丼通りというご機嫌な名称が、奥尻の観光MAPを見たときからきになっていたのだ。さて、実際に行ってみたウニ丼通りは、ウニを模った外灯が立ち、寿司屋や食堂がぽつぽつあるだけで、正直名前負けしている感じがした。しかし、折角来たのでここでウニ丼を食べることにする。
俺が入ったのは喫茶店風の内装の「ビアハウス マトイ」。「御食事処まとい」という割烹の姉妹店らしい。メニューにウニ丼がないので「しまった!」と思ったが、店員さんに尋ねるとウニ丼を用意してくれるという。値段は2100円だ。タレのかかった濃厚なウニはもちろん美味かったが、小鉢に添えられたタコが絶品で、正直驚いた。 奥尻最後のウニ丼を堪能した俺は、「うにまる公園」に行くことにした。うにまる公園は、昨日の夜、うにまるモニュメントのライトアップを見た場所だ。高台にある「レストラン華風亭」に入る。ここの名物は「ボラ」。奇妙な名前だが、コーヒーゼリーとプリンの上にソフトクリームのパフェの乗ったパフェのことだ。震災後、奥尻の復興に力を尽してくれたボランティアの人達への感謝の気持ちを表して「ボラ」と命名したという。甘さ控え目のパフェは、食後のデザートにぴったりだった。
バイクを返却し、徒歩でフェリー乗り場へ行く。二階にある辻売店は、奥尻限定の土産を沢山扱っている。奥尻昆布羊羹やウニスープは値段も安く、個人への土産に最適なので大量に購入する。奥尻には当分来られないだろうから、記念にウニ丸君のマスコットも二種類購入した。 フェリーに乗り込む。利尻・礼文のような派手な見送りはない。ただ、奥尻中学のバレー部が遠征試合らしく、船内は賑やかだった。観光客らしい人はまばらだ。多くは仕事で行き来する人らしい。 午後3時45分。フェリーが静かに出港した。遠ざかるサムーンを眺める。復興のシンボルであり、多くの人の悲しみや願い、感謝の気持ちが込められたこの壁画は、奥尻で震災の傷痕を見た後に見ると、また感じ方が違ってくる。
確か、北追岬に「よくきたさ」っていうモニュメントがあったな。ふと、そんなことを思い出した。
夕刻、フェリーは江差に到着した。俺は、タイミングよくやってきた函館行きのバスに乗りこんだ。 函館駅付近のビジネスホテルにチェックインし、夕食を食べに行く。 屋台が立ち並ぶ「大門横丁」で軽く中華まん等をつまんだ後、俺は炉端の店「函館あかちょうちん高砂通店」の暖簾をくぐった。
カウンター席はほぼ満席だったが、一席分あけてもらう。地元客に囲まれて、チューハイで乾杯した。
疲れた所為か酔いが早い。店を出ると、霧雨が静かに港町を濡らしていた。
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