旅日記北海道編2006 @ 復興 (1)第1日目 旅立ちは五月雨とともに 風薫る5月中旬。思いがけず連休をもらえたため、俺は旅行代理店に飛び込んだ。目当ては格安のフリーツアーだ。
旅立ちの日は雨だった。長年北海道を旅してきたが、雨降りのスタートというのは初めてだ。向こうは晴れていればいいのだが。
函館に到着すると快晴だった。突き抜けるように空が青い。だが、さすがは5月の北海道。温度は16℃と少し肌寒い。 バスで函館駅周辺まで移動し、路面電車の一日券を購入する。これは、飲食店や函館山ロープウェイの割引も付いていてなかなかお得だ。函館に到着したのが午後3時。到着時間が遅いので、もたもたしていると暗くなってしまう。今日は時間の許す限り歩き回ろう。 まず俺は、函館の坂巡りをすることにした。函館は坂の街と称される程、坂が多い。今年の二月に訪れた時は一面の雪景色だったが、今頃はどうだろう。
所々桜が咲いている。函館の桜は満開を少し過ぎた位だろうか。俺は、まず大三坂へ、そして「チャチャ登り」に向かい歩いて行った。「チャチャ」とは、アイヌ語でお爺さんを意味している。お爺さんの様に腰を曲げて登ることから、この名が付いたそうだ。雰囲気のある石畳を、その名の通り前傾姿勢で登っていく。カトリック元町教会や、聖ハリストス教会等、異国情緒あふれる建物が、函館に来たことを実感させる。坂を登り終え、振り向くと、青い海が目に沁みるようだ。
俺は北に向かって歩いた。八幡坂、日和坂、基坂と、坂を眺めながら外国人墓地の方へ向かう。 墓地をしばし散策する。見下ろすと海が見えてなかなかロマンチックな場所だが、振り返ると外国人の墓以上に寺や日本人の墓が沢山見えて、少し興ざめだ。
函館ドッグ前から市電に乗り、俺は堀川町駅前にある「中島廉売」を訪れた。ここは、食料品だけでなく、衣料品等も扱う商店街である。
俺は、薄暗いアーケードをうろつきながら、今日の夜食にする海産物を物色した。ウニが一折千円程度、ソイの刺身が300円だ。ご飯は、後でコンビニででも調達すればいい。 いい買い物ができて満足した俺は、函館駅付近にある「うにむらかみ」に向かった。ここは、比較的安く、良質なウニ丼が食べることができ、函館に来た時は毎回利用する店である。この旅初めてのウニ丼だ。やはり本場で食べるムラサキウニは美味かった。
市電で、今夜の宿に向かう。一泊目の宿は「函館国際ホテル」である。駅から少し外れているが、なかなか豪華だ。しかも、シーズンオフで空いているのだろうか、一人でツインの部屋を使わせてもらった。坂巡りでけっこう歩いたので、広いベッドに横たわり、しばし休憩する。
さて、函館といったらやはり夜景を見なければなるまい。俺は再度市電に乗り十字街へ、そして、ロープウェイ駅へ向かった。今年二度目の函館山夜景だ。 函館山の夜景といえば、世界三大夜景の一つとされている程有名である。俺はこれまでに数回見ており、今年は2回目になるのだが、何度でも見たくなる景観は確かにあるのだ。
展望台から外に出ると、革ジャンを羽織っていても肌寒い。目の前に宝石をばら撒いたような夜景が広がった。真っ暗な海に挟まれ、扇のように輝く幾千万もの街の灯。自然が作り出す美とは、対極にある人造の美である。俺は時間を忘れて街の灯を眺め、写真を撮り続けた。 夢中になり過ぎて、すっかり身体が冷えてしまった俺は、ライトアップされた教会等を眺めながら帰路についた。途中、「ハセガワストア」に寄り道する。ハセガワストアは、主に函館で展開するコンビニで、惣菜や弁当等をその場で作ってくれて人気がある。セイコーマートをこよなく愛し、北海道を旅する時はセイコーマートしか利用しない俺だが、函館周辺ではハセガワストアと決めている。俺は焼き鳥弁当(小)と安チューハイを購入した。
ホテルに戻った俺は、旅の初日を祝い、一人乾杯した。出来たての焼き鳥弁当はとても美味い。いよいよ明日は奥尻だ。俺は、まだ見ぬ離島に心を馳せた。
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