旅日記北海道編2006A 風花




■第二日目 摩周〜サロマ



 目の前にあるのは、イクラ丼と焼き牡蠣と帆立。今日二度目(!)の朝食だ。あたしは、普段朝食といえば、ご飯半分位と味噌汁しか食べないけど、旅に出ると朝から食欲があっていくらでも食べられる気がする今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

 ‥‥そんなワケで、今あたしは、釧路の副港付近にある「鮭番屋」に来ている。
 一夜明け、熱いシャワーを浴びて、気分をリフレッシュさせたあたしは、ホテルのレストランに向かった。まぁまぁな内容の和洋バイキングだったけど、朝市とかに行くつもりなので、程々にしておいた。

ホテルの食事 釧路駅前 マツダのデミオ

 ホテルをチェックアウトしたあたしは、定番の和商市場に向かった。ここでは土産をまとめて買って先に送ってしまうつもりだ。相変わらず激しい呼び込みには閉口したけど、そのうちの魚卵専門店を選んでタラコやイクラ、ホッケにシシャモ、トキシラズなんかの、一寸渋めな土産をまとめて購入する。あと、セイコーマートで予め買っておいた北海道限定のカップ麺なんかを便乗して入れてもらうことも、あたしは忘れなかった。
 ちなみに、魚卵専門店だけあって、後日食べたこの店のタラコやイクラは絶品だった。

 土産を無事購入し終えてご機嫌なあたしは、その足でマツダレンタカーに向かった。今回、あたしの足になるのはマツダのデミオ君だ。

 移動手段を手に入れたあたしが最初に向かったのは、冒頭でも言った鮭番屋。ここでは、最初に貝や魚を買い、隣の食堂で焼いて食べることができる。最近のあたしは、際限なく値段の上がってしまう和商市場の勝手丼より、こっちの方がお気に入りだ。850円のイクラ丼と、1個100円とか150円位の牡蠣や帆立なんかを次々買い、炭火で焼いてもらう。

鮭番屋 鮭番屋内 イクラ丼や牡蠣

 客がほとんどいないので、おばちゃんが付きっ切りで牡蠣なんかを焼いてくれた。これで1300円程度だ。かなりお得である。炭火の熱気で体が火照ってきた。焼きたての牡蠣や帆立も、イクラ丼もかなり美味しくて感激した。

 食事を終えたあたしは、マリモ国道を北上していった。最初の目的地はオンネトーだ。紅葉は終わってしまったけど、今の時期のオンネトーがどんな姿を見せてくれるのか楽しみだ。

 デミオの走りは好調だ。今回あたしは、デジタルビデオカメラも持ってきたので、真っ直ぐな道路なんかも撮影しながら走っていく。

真っ直ぐな道 何でもない風景 遠くに雪雲

 今日の天気は晴れなんだけど、遠くに暗い雲が立ち上っているのが気になった。弟子屈付近になると、阿寒岳の上に、すっぽりと雪雲がかかっている。オンネトー周辺になると、粉雪が降り始めた。
 陽射しに、舞い落ちた雪がきらきらと反射して花弁みたいだった。あたしの頭に「風花」って言葉が、ふっと浮かんだ。
 さらに、地面に落ちた細かい雪が、凍て付いたアスファルトをさざなみのように走り抜けて行って、あたしは別世界に迷い込んだような不思議な感覚に陥った。
 荒涼とした森林を抜けて行くと、そのうち、木々の間からコバルトブルーの湖面が見えた。オンネトーだ!

オンネトー1 オンネトー2 オンネトー3

 あたしは駐車場に車を停めて、寒々とした湖に近付いた。岸に近い所は氷が張っている。この時期のオンネトーは初めて見るけど、アクリル絵の具のような濃いブルーの湖面が独特の雰囲気だった。見る角度を変えると、それが明るい色になったり暗くなったり、流石は五色沼っていわれることはある。

凍った湖面 オンネトー4 オンネトー5

 摩周湖に向かう途中、小さな看板を見つけて車を停めた。「白藤の滝」とある。
 前から気にはなっていたが、あたしはまだ一度も見ていない。薄っすらと雪の積もった林道を慎重に歩いていくと、水音が聞こえてきた。

白藤の滝入口 駐車場 山道を降りる

 カメラを持っているので、さらに慎重な足取りで山道を降りていくと、赤茶けた岩壁から流れ落ちる滝が見えた。白藤っていうから、繊細な滝をイメージしていたんだけど、予想外に豪快な滝だった。岩も水も赤茶けた色をしているのは硫黄の成分が含まれているからだろうか。

濁った川 白藤の滝 摩周湖を目指す

 続いて、あたしは摩周湖を目指した。摩周湖は、あたしが一番好きな湖だ。何度行っても全く飽きなくて、時間が許すなら丸一日でも眺めてたいって思ってる。
 個人的には、第三展望台からの摩周湖が一番好きだけど、今の時期は道路が封鎖されてて、第一展望台しか行けない。
 冬季は駐車場が開放されてて無料って聞いてたけど、何のことはない。駐車場に入った瞬間、おばちゃんが寄ってきてしっかり410円取られた。いつもの硫黄山の駐車料金とセットになった駐車券をもらう。この時期、わざわざ遠回りして硫黄山までいくか!なんて毒づきながら、あたしは展望台に向かった。

 !!!

摩周湖1 摩周湖2

 あたしは言葉を失った。湖面に薄っすらと霧がたちこめ、驚くほど神秘的な情景だったからだ。
 よく霧の摩周湖っていうけど、実際はあまり霧がたちこめることはないそうだ。あたしも十数回は摩周湖に来てるけど、いつ来ても快晴だったのを憶えてる。晴れた摩周湖を見ると、婚期が遅れるとか出世できないとか、旅行会社が作ったような胡散臭い話があるけど、もし本当にそうなら、あたしは就職できずに一生独身の駄目駄目な男になっているはずだ。

摩周湖3 摩周湖にて

 正直、こんな寒い時期に霧の摩周湖に出会えるとは、あたしは少しも考えてなかった。それも、風景の邪魔になるような霧じゃなく、湖面はしっかり見える程度の霧で、なかなかいい感じだ。静かな湖面には、時々白い飛沫みたいのが見えて、いかにも冷たそうだった。

摩周湖4 摩周湖5

 名残惜しいけど、夕方までにサロマ湖に行かないといけないので、あたしは摩周湖を後にした。この旅の間に、もう一回位は摩周湖を訪れようと、あたしは密かに誓った。

 次にあたしがやって来たのは、屈斜路湖の南に位置してる和琴半島。ここで無料の温泉に入っていこうと思ったのだ。駐車場から歩いてすぐのところに、藻の生えた池のような露天風呂がある。観光シーズンだと、ここは通行人から丸見えなので、あたしは入ったことがない。だけど、今の時期は観光客も少ないだろうから、ひょっとしたら人の目を気にしないで温泉に入れるんじゃないかって考えた。

 そんなワケで、あたしの思惑通り、露天風呂周辺は人っ子一人いなかった。あたしはその場で全裸になり、露天風呂に飛び込んだ。

和琴半島の露天風呂 露天風呂内 露天風呂にて

 ちょっと熱めだけど、いい感じの湯加減に、あたしはうっとりしてしまった。目の前は寒々とした屈斜路湖が広がってる。木の葉なんかが浮いててけっして清潔とはいえないけど、あたしは長年入りたかった露天風呂に入れて満足だった。

 実は、この後、ショックな出来事があって、書こうかどうしようか迷ってたんだけど、書くことにした。あたしが屈斜路湖の周囲をブラブラ歩いてる時に、一眼レフのカメラを地面に落としてしまった。本当に何でもないような場面で、手に持ったタオルか何かを持ち替えようとした時に、スルっとカメラが地面に落下した。幸い本体は異常なかったんだけど、オートフォーカスで撮ろうとすると、レンズが動かなくなってしまった。

 そんなワケで、この後、あたしは望遠用のレンズと、補助用のコンパクトカメラで旅日記の写真を撮っているので、何となく写真の雰囲気が変わってると思う。
 いつまでも、ショックを引きずってても仕方ないので、あたしは気を取り直して、デミオ君を走らせた。

 美幌峠に差し掛かったので、車を停めた。ここは、天気がいいと屈斜路湖が凄くきれいに見える場所だけど、だいぶ陽がかげってきたせいか、湖は荒涼とした雰囲気だった。それに、風が物凄く強くて、あたしは寒くてガタガタ震えてしまった。

美幌峠1 美幌峠2 美幌峠3

 この後あたしは、まっすぐサロマ湖を目指した。サロマ湖は夕日の名所なんだけど、今の時期は午後3時半に日没してしまうので、流石に夕日は間に合わなかった。サロマ湖の「船長の家」に着いた頃には、周囲は既に真っ暗だった。

 もうすっかりお馴染みの「船長の家」は、夕食にカニをこれでもかっていう位大量に出す民宿で、あたしはここ数年、道東を旅する時は必ず利用している。
 宿の温泉に入り、部屋でくつろいでいると、夕食の準備ができたと放送が入った。今日は、昼食を摩周湖の「あげいも」と別海牛乳だけに抑えてあるから、あたしのお腹も準備OKだ。
 あたしが、浴衣姿で欽ちゃん走りをしながら食堂に行くと、既に食堂は、興奮気味な宿泊客達による撮影タイムが始まっていた。みんな、テーブル一杯に並んだ魚介類を撮影している。

船長の家夕食 刺身等 カニ等

 今回のメニューを紹介すると、最初の時点でテーブルに乗っているのは、
 毛ガニ、カニしゃぶ、牡蠣鍋、刺身(エビ、サヨリ、ホッキ)、カニ飯、茶碗蒸し、カニサラダ、氷頭ナマス、帆立マヨネーズ、鮭天麩羅、カニあんかけ、煮物二種、チーズケーキ
 と、けっこうな品数だが、例年に比べるとそれ程インパクトはなかった。もちろん、この後、追加メニューが運ばれるのはわかっているから、ガッカリするようなことはなかったんだけど。テーブルの端にある巨大な空の鍋も気になる。

 あたしは合掌してから、カニ達に挑んでいった。追加メニューが運ばれてくる前に、何品か片付けておくとテーブルがすっきりするので、あたしは急いで何品か平らげた。毛ガニは味噌が濃厚で、とても美味しい。

 そろそろ追加メニューが運ばれてくるはず。あたしが、ドキドキしながら待っていると、最初にやって来たのは、まず、茹でたての毛ガニ1杯!
 キタ━━(゜∀゜)━━ !
 さらに、焼ホッキ、焼牡蠣が続く。片付けたテーブルは、あっという間にまた一杯になった。毛ガニの殻を切り、身をむしる作業を繰り返し、ある程度身が貯まったら食べる。あたしは、そんな作業に没頭した。カニもいいけど、サロマ湖は産地だけあって牡蠣も美味しい。

茹でたての毛ガニ 焼牡蠣 ホッキ

 そして、続いて持って来られたメニューに、あたしはビックリして思わず茶碗蒸しを一気食いしてしまった。
 キ、キタ━━(゜∀゜)━━ !!!
 何と、タラバ一杯だ。しかも、まだ生きてて動いてる。
 テーブルの端にあった空鍋は、このタラバを茹でるための物だったのだ。
 目の前でブクブクと泡を出しながら、タラバが茹でられていく。赤く茹で上がったタラバは、なかなかの迫力だ。

活きタラバ 茹で上げ中のタラバ 茹ったタラバ

 タラバと格闘の末、あたしは全ての身を食べきった。テーブルにはカニや牡蠣の殻が大量に散乱している。流石に食べ応えがあった。
 最後に出てきたカニ汁と、デザートのチーズケーキで、あたしは約1時間半の食事を締めくくった。

 ‥‥そんなワケで、夕食を食べ終えたあたしは、もう一度温泉に入って返り血(カニの汁)を洗い流した。
 宿に置いてあったドラゴンボールの単行本なんかをぼんやり読みながら、あたしは、これだけ料理を出して、温泉もあって7,000円程度なんて、本当に儲けがあるのかなんて、余計な心配をしてしまう今日この頃なのだった。



to be continued…


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