旅日記北海道編2006A 風花




■第一日目 釧路



 研修とか、なんやかんやで長期の夏休みを取れなかったあたしは、急激に道東に行きたくなった。道東は、北海道好きのあたしの中でも、一番落ち着く場所だ。特に釧路は、あたしにとって故郷にも似た特別な街だと思ってる。
 望郷にも似た「北海道に行きてぇ症候群」が発症してきた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

 ‥‥そんなワケで、なぜか今回あたしは、「きっこの日記」風に、旅日記を書いている。11月下旬にやっとのことで4連休をもらったあたしは、JALのセントレアと釧路空港往復のチケットを押さえた。ANA派のあたしだが、中部釧路往復はJALしかないので仕方ない。JALツアーの、シーズンオフの釧路往復はけっこうお得なのでおすすめだ。

クリスマスムードのセントレア

 セントレアはクリスマス一色だった。あたしは、きしめんを食べながら旅の前の昂った心を静めた。東日本に暴風警報が出ていたせいか、出発時間が少し遅れてる。約15分程遅れて飛行機は離陸した。
 雲を抜けると、空が眩しいほど明るかった。期間限定のゆずジュースを飲みながら、あたしは束の間の空の旅を楽しんだ。
 飛行機が着陸体制に入った。窓からは、広大な湿原や雪峰が見える。

 午後2時過ぎに釧路空港に到着した。釧路は快晴だ。見上げた空が驚くほど高くて、あたしは胸が高鳴るのを感じた。
 「おえ〜!よく来たべ。」
 空港のロビーでは、なべさんが窓ガラスに張り付いて待っていた。なべさんはあたしの東京研修時代の同期で、柔道の猛者だ。約2年振りに会ったなべさんは、眼鏡のフレームが変わった他は全く変わってなかった。

釧路空港にて ガラスに張り付くなべさん 釧路空港前にて

 初冬の釧路は流石に寒いけど、あたしは革ジャン皮パンで防寒対策しているので大丈夫だ。見慣れたなべさんの四駆に乗せてもらい出発する。
 なべさんが宅直で遠出ができないので、とりあえず釧路湿原に向かうことにした。真っ直ぐで気持ちいい道だ。信号のほとんどない道路が、北海道に来たということを急激に実感させてくれる。
 黄色く冬枯れした釧路湿原は、広大さがさらに強調されてて、まるでサバンナみたいだった。

冬枯れた釧路湿原 釧路湿原にて

 なべさんが連れて行ってくれようとしたラーメンの「まるひら」はお休みで残念だったけど、代わりに六花亭春採湖店に寄ってもらった。スウィーツ好きなあたしには、六花亭の安くて美味しいケーキ類はたまらないのだ。今月のシフォンとリンゴのシプーストと、二つ買っても300円しなかった。

 だけど、そんなことよりも午後3時半で日没し始めてるのに、あたしはビックリして思わずセイコーマートジャスミンティーを一気飲みしてしまった。思った以上に日没が早いようだ。
 幣舞橋から見える夕日を眺めながら、なべさんのお母さんが経営してる「喫茶ローゼ」に向かってもらう。
 なべさんのお母さん・渡邉松子さんは、エゾフクロウを撮影するアマチュア写真家で、道内だけじゃなく、東京でも写真展を開催するほど活躍してて、喫茶ローゼは、地元ではフクロウの喫茶店として親しまれてる。コーヒーも美味しく、あたしは、釧路に行った時は必ず寄るようにしてる。

喫茶ローゼ 喫茶ローゼにて あたしとなべさん

 コーヒーをご馳走になり、新作のカレンダーまでいただいてしまった。2年振りのローゼは相変わらず居心地が良くて、ついつい長居してしまった。渡邉さんもお元気そうで何よりだ。

 なべさんにホテルまで送ってもらい、後で飲む約束をして一旦別れた。今日のあたしの宿は、釧路駅前の東急イン。朝食のバイキング付きで、料金もツアー代に含まれてる。部屋でしばらく寛いだ後、あたしは釧路の繁華街に繰り出した。
 あたしは、この港町独特の匂いやレトロな雰囲気がとても気に入ってる。なべさんと合流し、「炙り屋」に行く。
 「炙り屋」は、地元の人もよく飲みに行く炉端だ。なべさんが、手際よく注文する。何と、鮭児があったので、あたしは驚いてモスコミュールを一気飲みしてしまった。鮭児(けいじ)とは、もちろん人の名前ではなくて、簡単に言うと全身トロ状態の鮭のこと。11月上旬から中旬にかけて、知床から網走周辺で獲れる、脂ののった若いシロザケだ。迷わず握りとルイベを注文する。

炙り屋にて ツブやルイベの盛り合わせ 鮭児の握り

 初めて食べた鮭児は、口の中であっという間に溶け、とても美味しかった。
 他にも、コマイやツブ、秋刀魚の刺身なんかを堪能した。一軒目はなべさんがご馳走してくれた。ありがとう、なべさん。

 今日は炉端をハシゴすることにした。繁華街をなべさんと欽ちゃん走りしながら、炉端「助ちゃん」に向かう。以前もなべさんに連れて行ってもらった店で、こじんまりとしているけど、いつでも新鮮な魚介類と美味しい酒を出してくれる、あたしのお気に入りの店だ。

助ちゃんにて イカゴロ たんたか

 イカのゴロやツブ貝、それから"たんたか"の刺身を注文する。たんたかとは、アイヌ語で「カレイ類」のこと。カレイが白糠の鍛高山まで川を登った伝説が由来だそうだ。
 「白糠に有名な紫蘇焼酎で鍛高譚(たんたかたん)っていうのがあるべ。」
 なべさんが説明してくれた。

ツブ タチの揚げ出し おやじ風

 刺身類の新鮮さは言うまでもないが、茎山葵等の付け合せも渋い。さらに、この店オリジナルの「おやじ風」、タラの白子"タチ"の揚出しも注文する。おやじ風とは、釧路発祥というザンギ(鶏の唐揚げ)を塩だれのスープに入れたもの。タチも濃厚かつクリーミーで、これが感涙ものの美味さだ。
 あたしとなべさんは、夜遅くまで語り合い、グラスを交わした。

 「おえ、明日から気を付けて旅しろ。」
 ‥‥そんなワケで、なべさんと別れ、いい感じに酔っ払ったあたしは、外灯の綺麗な幣舞橋で夜風に当たり、欽ちゃん走りしながらホテルに帰った。

 やっぱり釧路はいい。人情味があって、どこか懐かしくて、美味しいものが沢山あって。転勤の希望調書が来たら、釧路って書こうかって本気で思い始めてる今日この頃なのだ。

夜の釧路駅前 釧路港にて 夜の幣舞橋





to be continued…


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