旅日記北海道編2007 花詞(4)





第3日目 礼文島美味探訪




帯のアラームが、俺を深い眠りから呼び覚ました。
昨夜は、いつ眠りに落ちたかも憶えていない。微かに、消灯前に流れるオルゴールの音色を聞いた覚えがある。恐らく、横になったと同時に眠ってしまったのだろう。
 急いで洗顔し外に出ると、既にTさんが玄関前に待っていた。しまった。桃岩時間と実際の時間を勘違いしていたらしい。

 Tさんと一緒に行くのは元地にある「佐藤売店」。朝の5時から営業している漁師の店だ。車ならすぐだが、歩けば30分位かかる。
 足には昨日のダメージが相当残っていた。桃岩荘前の見返り坂でさえ、上るのがきつい。
 二人でふらふらと元地目指して歩いた。

  元地  佐藤売店  ダブルウニ丼

 佐藤売店に到着する。早朝だけあって他の客は全くいなかった。俺はダブルウニ丼(1,800円)、Tさんはスペシャルウニ丼(2,600円)を注文する。
 鮮やかなオレンジ色は、、まさに礼文のエゾバフンウニだ。
 うまい!
 最高級の昆布を食べて育ったエゾバフンウニは、臭みもなく味が濃い。ウニ嫌いでも、利尻や礼文のウニは食べられるという人はけっこういるらしい。

 Tさんは今日の最初のフェリー、通称零便で島抜けするので、のんびりもしていられない。
 桃岩荘に向かって歩いていると、遠くから大音量で歌が聞こえてきた。
 桃岩荘で起床時に流す「石狩挽歌」だ。こんな遠くまで聞こえるなんて、どれだけ大音量なんだ!僻地に建った一軒宿だから許されるのだろう。
 そういえば、消灯の時にかかるオルゴールも石狩挽歌だったな。そんなことを考えながら、ぼんやり桃岩荘を目指す。

 桃岩荘に着くと、皆慌しく動き回っていた。
 お客は皆、それぞれの出発するフェリーの時間ごとに荷物をまとめておく。俺も、「島抜けしないが桃岩荘を出る人」の場所に荷物を置いた。
 「まさか、島抜けしないのに桃岩荘を出る人はいないでしょうね?」と昨日ヘルパーさんが言っていたが、そのまさかである。
 ヘルパーさんに、「今日から星観荘に行きます。」と告げると、「何と、S観荘に!」とオーバーなリアクションをしていた。
 フォローしておくと、桃岩荘と星観荘は決して決して仲が悪いわけではなく、むしろお互い泊まり合ったりするなど仲が良い。星観荘と桃岩荘の頭文字をとって、の関係といわれている。
 俺の荷物は、星観荘のオーナーの彦さんに預けておいてくれるそうだ。

 そうこうしているうちに、零便で島を抜ける人達の見送りになる。S藤さんカップルは、この後富良野方面へ行くという。
 同じく、昨日苦楽を共にしたジェフ達外国人4人、Tさんともお別れだ。

 桃岩荘では、島抜けする人は歩いて港まで行くという伝統がある。最後に、島の景色等を目に焼きつけ、名残を惜しむためだそうだ。ちなみに荷物や体調の悪い人は車で運んでくれる。
 一緒に歩いて見送りに行こうとも考えたが、足も痛いし、見送りの人は車で連れて行ってくれるということなので便乗することにした。

 見送りの儀式が始まる。

 「せ〜の!行ってらっしゃ〜い!!」
 一列に並んだS藤さん達がそれぞれ挨拶すると、皆で一斉に叫ぶ。

 「行ってきま〜す!!」
 ヘルパーさんがギターをかき鳴らし、「遠い世界へ」の合唱になる。皆で手拍子をし、声を張り上げて歌った。
 S藤さん達は、歩きながら何度も振り返っていた。これが、「見返り坂」という名前の由来だろう。

   見送りの儀式    見えなくなっても手を振る

 歌が終わると、再び、
 「行ってらっしゃ〜い!」
 「行ってきま〜す!」
 「また来いよ〜!」
 「また来るよ〜!」
と、お互い繰り返し叫ぶ。もうS藤さん達の姿は米粒ほどに小さくなっていた。だが、見送りの儀式はまだまだ続く。

 「行ってらっしゃ〜い!」
 「……ぃま………す」
 姿はついに見えなくなり、声もほとんど聞こえなくなった。

 「もう声は届かないかもしれません。しかし、思いはきっと届くはず!せ〜の、行ってらっしゃ〜い!!」
 ヘルパーさんの号令に合わせて、俺たちは声を出し続けた。

掃除タイム  「行ってらっしゃ〜い!」
 「また来いよ〜!」
 これだけの見送りをしてもらえたら、俺は感動で泣いてしまうかもしれない。

 見送りの後は、桃岩荘恒例のお掃除タイムとなる。自由参加ということだが、その場にいる人は断れる雰囲気ではない。

 井上陽水の「夢の中へ」が鳴り響く中、皆で雑巾がけする非常にシュールな画が面白かった。

 囲炉裏の間や回転ベッドが終わると、今度は食堂だ。曲は「宇宙戦艦ヤマト」等アニメソングへと変化していく。テーブルを動かし、雑巾がけはいつの間にかレースになっていた。

 港へ見送りに向かう時間になったので、ブルーサンダー号エースの荷台に乗り込む。
 桃岩荘に残るヘルパーさん達が見送ってくれた。おっちゃんの一人が、見返り坂をどこまでも追いかけてきて、追いつきそうになったのには驚いた。




   ブルーサンダー号エースに乗って    追いつきそうになるおっちゃん



 港に着くと、徒歩で先行していたS藤さん達がすでに到着していた。
 零便で島抜けするのはS藤さんカップルとTさん、そしてロバートとジェフ。ジュディー達、外国人女性二人組は午後の便で島抜けするらしい。

 しばらくすると零便のフェリーが近づいてきた。ヘルパーさん達は、一斉に旗を振り、「おかえりなさ〜い!!」と叫びだした。この零便で島に来た人を迎え入れ、さらに入れ替わって島を出る人を送り出すのだ。俺も便乗して、桃岩の旗を振らせてもらう。

   旗を振る    桃岩荘の旗

 星観荘のオーナー・彦さんに挨拶し、荷物を預け、今日の最終便の出迎えの時に送迎してもらう約束をする。
 「踊ってきます。」と彦さんに告げて、今日同じく星観荘に泊まるN野さん、ジュディー達と一緒に桃岩荘の見送りの列に参加する。前列は、ヘルパーさん、後列はお客という配置である。
 最初はガッチャマンやエイトマンといったアニメソングを見様見真似で踊る。続いて、足を広げて腰を落とし、例の「ぎんぎんぎらぎら」が始まった。

 「ぎんぎんぎらぎら夕陽が沈む ぎんぎんぎらぎら陽が沈む〜♪ そぉれ! 真っ赤っ赤っ赤 そぉらの雲〜 みんなのお顔も真っ赤っ赤っ赤〜 ぎんぎんぎらぎら陽が沈む〜♪」

 楽しい!!これは癖になるかもしれない。歌も踊りも、桃岩荘のことも、遠目に見ているだけでは何もわからない。実際に泊まって、歌って踊って、初めてその楽しさがわかるものだ。

   歌って踊る    見送り

 そして、船上のS藤さん達に向け、「遠い世界へ」を合唱する。遠ざかるフェリー。民宿「なぎさ」の見送りの紙テープが舞う。

 「行ってらっしゃ〜い!」と「行ってきま〜す!」という声がいつまでも交錯する。
 俺達が船が見えなくなるまで叫んでいるのと同様に、船上のS藤さん達も声が届かなくなっても叫んでいるんだろう。
 ありがとう。S藤さん、Tさん。ロバートにジェフ。またいつか、どこかで…。



送りを終えた俺は、気持ちを切り替え、原付を借りに行った。俺は俺で、充実した旅を続けなければ。
 原付は、一日借りて4,000円。足も痛いことだし、今日は原付で島を回り、美味いものをいっぱい食べてやろう。
 今日一日の相棒は、黄色いHONDAのToday。キーを回すと、軽やかなエンジン音が響いた。さあ、出発だ!

   今日の相棒・Today    島唯一のセイコーマート

 今日は曇りで風が強い。原付に乗ると、風の冷たさが一層際立った。少し不安だったが、とりあえず島唯一のコンビニ・セイコーマートに立ち寄る。
 お約束通り、ジャスミンティー等ドリンク類を買いだめしておく。いわゆる「足」がないと、今後コンビニに行くことも簡単にはできないからだ。
 それにしても風が強い。バイク用にゴーグルと軍手を持ってきて正解だった。

 バイクを「桃岩展望台」方面に向ける。展望台付近の花をゆっくり観察しようと思った。

   桃岩展望台遊歩道    風に揺れるイブキトラノオ

   雲に隠れる利尻富士    遊歩道を行く

 展望台に人はまばらだった。ゴウゴウと風が吹きぬけ、背の高いセリの仲間が吹き飛ばされんばかりに揺れていた。何なんだ!この風の強さは!?
 昨日までは、あんなに穏やかな日だったのに。今日8時間コースを歩く人は大変だぞ。他人事ながら心配してしまう。

 風が止む一瞬を狙って、花を撮影していく。
 あの白いセリ科はオオハナウドか。ピンクの尻尾みたいなのはイブキトラノオ。ヤブキショウマにオオダイコンソウ…。本で調べながら散策する。

   ミヤマキンポウゲ    オオハナウド

   ヤマブキショウマ    チシマフウロ

   オオダイコンソウ    イブキトラノオ

 礼文島は、海抜零メートルから高山植物が咲く花の浮島。通常なら山登りの装備をしないと見られないような高山植物を、身軽な格好で見に行けるのが礼文島の良いところだ。



 続いて、「桃台猫台」へ向かう。展望台の麓にはハマナスが綺麗に咲いていた。展望台から見渡す風景は、相変わらず素晴らしい。だが、晴れた日はもっと海が綺麗に見えるだろう。

 眼下には、先ほど立ち去ったばかりの桃岩荘が見えた。そういえば、併設している喫茶店が丁度開店したころだ。

   桃台猫台から見える桃岩荘    駐車場から見えるToday

   桃岩    元地方面

   海が綺麗    ハマナス

Ben&Joe HOUSE

 急に思い立って、桃岩荘に向かい原付を走らせる。
 お目当ては、見返り坂の途中に建つ「Ben&Joe HOUSE」
 通称「ベンジョハウス」だ。

 ベンジョハウスは、桃岩荘の女性ヘルパーさんが日替わりで切り盛りしている喫茶店で、午前10時半から営業している。ここのカレーが美味しいと宣伝していたので、半信半疑でやって来たのだ。
 外観も、店内もなかなかお洒落である。店内の窓からは猫岩が見えた。カウンター席に腰掛け、シーフードカレー(680円)とカルチチ(カルピスの牛乳割り 250円)を注文する。
 果たして、ベンジョハウスのカレーとは!?

 おおっ!?

 正直、一寸驚くほどの豪華さである。

   シーフードカレー    カルチチ

 海老や帆立等、具沢山で、添えられたエンドウの彩りも鮮やかである。
 しかも、けっこう美味い。物価の高い礼文島だが、これだけのカレーが680円ならお得だろう。それにしても、桃岩荘にはこれだけのカレーを作るノウハウがあるのに、どうして夕食でこのカレーを出さないのだろうか。桃岩荘の夕食、朝食があの内容で、それぞれ1,050円、630円もするのに。疑問である。

   ベンジョハウス内 猫岩が見える    カウンターとゴーグル

 外に出ると、相変わらず風が強かった。雨合羽を羽織り、再び原付を始動させた。

 今度は、礼文島東側の道路を北へと向かう。礼文島南北をつなぐ唯一の道路である。しばらく走ると、「久種湖」が見えてきた。
 久種湖は、日本最北の淡水湖だ。春には、ミズバショウが咲き乱れるそうだが、今は見渡す湖も周囲の丘も、限り花は咲いていない。

   原付に乗って    久種湖

 島の北東の集落、船泊に到着した。船泊でのお目当ては、「双葉食堂」だ。ラーメンとか中華丼とかが美味しいらしい。俺は、こういうB級グルメっぽい店が大好きだ。
 双葉食堂は、本当に下町の定食屋といった外観だった。昼過ぎで混雑も一段落したようで、客はまばらだった。カウンター席に座り、「塩ラーメン」(600円)を注文する。

   双葉食堂    双葉食堂の塩ラーメン

 しばらく待つと、透き通ったスープの塩ラーメンが運ばれてきた。まずはスープからいただく。
 うん、美味い!
 凍てついた身体に、熱いスープが染み入るみたいだ。具は、チャーシューに大きめなメンマ、葱だけのシンプルなラーメンである。だが、利尻昆布を使っているというスープは、上品でなかなかのものだった。誤魔化しの効かない塩ラーメンで、美味しいと思えるものに出会えるのは久し振りである。

 再び原付を走らせる。次に向かったのは、「ファミリーマートよこの」ファミリーマーとトいってもコンビニではなく、小さな商店である。ここでお目当ては、「最北端のたい焼き」だ。尻尾まで餡が詰まっていて美味だった。

   ファミリーマートよこの    最北端のたい焼き

星観荘とTodayアルタイル  原付で走っていると、風がゴウゴウと鳴り、奥歯がガチガチと鳴った。寒すぎる!

 俺は一旦、星観荘に行き、衣類を取りに行くことにした。

 星観荘のフロントで荷物を受け取り、ついでにチェックインも済ませる。
 俺が、「あんまり寒いんで服を取りに来ました。」と言うと、彦さんは、「気温が10℃ちょっとで、風速10メートルだったら、体感温度は1〜2℃だよ。」と教えてくれた。道理で寒いわけだ。

 荷物を部屋に運んだ。部屋は前回と同じ「アルタイル」。二段ベッドが4台並んだ8人部屋だ。
 土産にと思って買っていた「桃民」のトレーナー(2,500円)を着る。これ一枚でかなり暖かい。買っておいて正解だった。
 星観荘は以前とそれ程変わっていないようだ。唯一、外にウッドデッキが出来ており、晴れた夜には寝そべって星空を眺められるようになっていた。

 再び、原付を走らせる。徒歩ではなかなか行けない所へ行ってみよう。

 俺は島の北東の先端、「金田岬」へ向かった。
 金田岬は、売店がある他は正直あまりパッとせず、長居するような場所ではなかった。

 ついでなので、「礼文空港」へ行ってみる。今は定期便は出ていない小さな空港だ。
 坂道を原付で駆け上がると、一面にエゾカンゾウの黄色が広がった。

   お一面のエゾカンゾウ    礼文空港

 おおっ!これはなかなかいいじゃないか!!
 それ程期待していなかっただけに、予想外の風景が見られると嬉しい。さらに、遠くにはスコトン岬やトド島がよく見える。礼文空港の滑走路等を見学し、もう一度エゾカンゾウを眺めながら坂を下る。

   礼文空港への道    遠くにトド島

旧星観荘見内神社の鳥居と利尻富士  礼文空港の麓には、古びた「民宿 星観荘」の看板がかけられた建物があった。噂に聞く「旧 星観荘」である。

 原付を南へと走らせる。風と寒さは相変わらずだが、雲が晴れて利尻富士が綺麗に見えた。



 丁度通りかかった「見内神社」の赤い鳥居と利尻富士のコントラストが美しかった。

 ちなみに、見内神社は安産にご利益があるそうだ。


   利尻富士とToday    波が高い

ェリーの最終便が到着する時間に合わせて原付を返す。星観荘のスターライナーで、最終便で礼文に来た人と一緒に宿まで送ってもらう。桃岩荘から移ってきたN野さんとも再会した。

 最終便で到着したのは、札幌から来た二人組みだ。俳優の寺島進に似た渋いおっちゃんSさんと、大泉洋みたいなパーマのおっちゃんYさんである。
 Sさんから8時間コースのことを色々聞かれた。Sさんは、以前8時間コースに挑もうとして挫折した経験があるらしく、非常に8時間コースにこだわっていた。どうしても8時間コースを歩きたいSさんと、あまり気乗りしないYさんの掛け合いが愉快だった。

 星観荘に到着し、入浴してぼんやりしていると夕食の準備ができたと放送が入った。以前あった「ミニウニ丼」の注文が入らなかったので疑問に思っていたが、この数日、波が高いためウニ漁が出ていないらしい。通常星観荘では、小さいながらバフンウニとムラサキウニの乗ったウニ丼が500円という破格の値段で食べられる。それだけにウニ不漁というのは残念だった。
 気を取り直して今日の夕食だ。食堂兼談話室であるブラックホールへ行く。

 今晩のメニューは、

   刺身(鮭のルイベ、海老)
   カレイの揚げ物
   ウニ
   わかめときゅうりの酢の物
   カニ(ズワイ、タラバ)
   肉しゃぶサラダ
   かまぼこと竹の子の煮物
   海老の頭の味噌汁
   イチゴのフルーチェ

   星観荘 7月11日夕食    7月11日宿泊者

 豪華な家庭料理といった感じだ。一品一品手が込んでいる。
 高い宿に泊まれば、それだけ豪華な食事が出るのは当たり前だが、1泊2食6,000円という値段でこのクオリティーの高さは、やはり星観荘ならではだと思う。

 夕食後、外に夕日を見に行ったが、曇っていて見ることはできなかった。そのかわり、ブラックホールで夕焼けを見る集まりがあった。部屋にランプを灯し、薄紫色に暮れていく空をぼんやり眺めて過ごした。

   夕焼け    夕焼けを見る集い

 さて、星観荘恒例のミーティングの時間だ。星観荘のミーティングは、それぞれの自己紹介、今日行ったコースや行動の反省、明日の予定等を話し合う。
 例のおっちゃん二人組が、8時間コースを歩くか否かでまだ悩んでいた。
 「だから、絶対8時間歩いた方がいいって!」とSさんが言うと、
 「でもな〜。俺、歩き切る自信ないし…。」とYさんが弱気に言う。この繰り返しで、なかなか決められないようだ。
 今日8時間コースを完歩した女性Mさんが、8時間コース完歩の達成感を熱く語った。俺も8時間コースの面白さ等を語って後押ししようとする。
 「そうだよ。達成感!そんな達成感、8時間コースを歩かないと経験できないって!」とSさん。
 「でも、途中で食べる飴とか、全く用意してないよ。」とYさん。
 「じゃあ、私がキャラメルを提供しますよ。」とMさん。
 だが、結局、Yさんの足の調子が悪いということで、この二人は4時間コースに落ち着いた。

 俺は、迷った挙句、桃岩展望台から桃岩歩道を南に歩く通称「桃知コース」に決めた。
 N野さんも同じ桃知コースにしたので、明日は一緒に歩くことになった。

 ミーティング後は、ブラックホールで飲み会になる。焼酎の番茶割りを飲みながら、Sさん達と旅について語り合った。
 ふと思いついて外に出てみる。空は厚い雲に覆われ、真っ暗だ。星観荘初日は、星の全く見えない夜だった。
 消灯時間になりベッドにもぐりこむ。隣の二段ベッドでは、まだ8時間コースに未練のあるらしいSさんとYさんが、上と下で小声で言い合っていた。

 明日も沢山歩く。ゆっくり眠ろう。まだ痛みの癒えない両足をさすりながら、俺は眠りに落ちていった。



to be continued…


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