旅日記北海道編2008 特別編 24時間コース(2)





礼文島1周72km 24時間コース 後編


半戦突入だ。
前半の起伏に富んだトレッキングコースをクリアしているので、気分的には楽、な筈だった。だが、固く単調なアスファルトのコースは、徐々に俺の足に負担を与え、テンションを下げていった。

 18時40分、香深井。

 18時49分、見内神社。利尻富士は、雲で隠れている。麓の街明かりがキラキラと光っていた。

 18時52分、礼文町総合体育館「潮騒ドーム」。剣道の練習をしていた。

 見内神社  潮騒ドーム

 18時55分、香深井郵便局。

 19時05分、駐車公園。トイレ休憩する。

 香深井郵便局  利尻富士

 微かに見える利尻富士  駐車公園

 街灯が少ないので、ヘッドライトの灯りが頼りだ。特に、覆道(ふくどう トンネルみたいなもの)を通過する時は本当に真っ暗で、恐怖心さえ覚える。

 19時26分、起登臼(きとうす)。車がスピードを出していて怖い。むこうもきっと怖いだろう。夜の早い礼文で、今頃歩いているのは俺だけだ。

 覆道  起登臼

 闇の中の利尻富士  夜道を行く

 19時41分、金環日食観測記念碑。

 19時50分、ウニむき体験センター。

 ウニむき体験センター  内路

 19時58分、内路。暗闇の中を歩くと、全く進んでいないような錯覚に襲われる。1kmって、こんなに長かっただろうか。

 20時13分、礼文岳登山口。閉まった売店前に座り、休憩していると、男性が奥から出てきて声を掛けてきた。
 「今下りて来たの?」
 礼文岳の登山者だと思ったらしい。
 「今、スコトン岬まで歩いているんです。」
 島を一周していることを説明すると、男性は、
 「朝までなら着けるよ。頑張って。」
 と励ましながら去っていった。他愛のない会話だったが、久し振りに人と話して元気づけられた。

 礼文岳登山口  金田岬への分岐標識

 周囲は真っ暗だ。海沿いを歩くので、波の音だけが不気味に大きい。時々、民家の前を通ると、窓から暖かそうな団欒が見え、「俺は遠い礼文まで来て何やってるんだろう?」と自問自答してしまう。

 20時56分、上泊。コースは分岐し、金田岬方面へ。単純にスコトン岬を目指すなら、ここから10km程度だが、24時間コースは礼文島の北東側の岬・金田岬を経由しなくてはならない。そうしないと1周したことにならないからだ。ここが、24時間コースの難易度を上げている。

 上泊分岐  船泊まで6キロ

 星観荘へ2回目の電話連絡をする。電話の向こうから、「頑張れ〜!」と声援が聞こえ、大いに励まされる。

 ここからが長い。周囲が暗いため、ちょっとした段差に足をとられて痛めそうになる。

 民家にあった変なオブジェ1  民家にあった変なオブジェ2

 真っ暗な中、金田岬の灯台を目指し、歩く。しかし、遠くに見える灯りを頼りに歩くと、ただの街灯だったり、他の照明だったり、偽灯台に騙され続けて心が折れそうになる。これを人呼んで「金田岬地獄」というらしい。

 わかりにくいが金田岬灯台  食堂「あとい」

 22時20分、ついに金田岬に到着。着いてみたら何のことはないのだが、上泊の分岐から1時間半近く歩いたことになる。本当に長かった。

 対面の海にスコトンの灯り  旧星観荘

 22時33分、礼文空港入口、旧星観荘前。星観荘に、今日最後の連絡を入れる。
 彦さんいわく、「早いね!後、2時間位で着いちゃうよ。」
 足の状態から2時間は無理かもしれないが、なるべく早く着きたい。早くゴールして休みたかった。

 22時59分、船泊。祭りの後のせいか、町中提灯がぶら下がっている。歩道に腰掛け、澄海岬の売店でもらったバナナを食べる。涙が出るほど美味かった。
 船泊上空は晴天。幾筋も、流れる星が見えた。

 澄海岬売店でもらったバナナ  船泊集落

 ここからがまた長い。海を挟んだ反対側の岬の灯りを目指し歩く。まだあれだけあるのか…。泣きたくなった。

 双葉食堂前  スコトンまで8キロ

 ゴールまで約8キロ。途中で栄養剤やウィダーインゼリーを摂取しながら、誤魔化し誤魔化し、歩く。  頭に響くのは、何故か桃岩荘で聴いた「石狩挽歌」。

 「海猫(ゴメ)が鳴くから鰊が来るとぉ〜♪」
 朦朧とする意識の中で、石狩挽歌を口ずさみながらトボトボと歩く。
 「オンボロロ〜 オンボロボロロ〜♪」

 23時35分、浜中。足だけでなく、リュックの紐が肩に食い込んで痛む。

 浜中分岐  対岸の船泊の灯り

 日付が変わった。

 8月10日零時20分、江戸屋、スコトンとトド島展望台との分岐。足のいたる所が痛く、重い。ストックも駆使しながら、ひたすら前進する。不思議なことに、なぜか眠さは全くない。

 星観荘前  スコトン

 1時00分、ついに星観荘前通過。

 上泊分岐  スコトン岬まで300メートル

 スコトン岬まで300メートルの標識が見えた。進まない足がもどかしい。

 駐車場を抜け、震える足で岬への階段を下りていく。


   手だけの記念撮影




 1時15分、ゴールのスコトン岬、「最北限の地」碑にタッチする。ついに礼文島1周完歩した。

 泣けるほど感動するかと思ったが涙は出なかった。ただ、静かに達成感が満ち溢れていた。

 風が強く、セルフタイマーで撮影するのが不安だったため、ゴールの写真は手しか写っていない。気付いたら、昨日の朝から写真を300枚位撮影していた。写真を撮っていなかったら、もう30分位はゴールが早かったかもしれない。

 最北限の碑  満身創痍

 さて、これからどうするか…。俺は、真っ暗で無人のスコトン岬で、驚く程冷静に今後のことを考えていた。今ゴールしても、皆寝静まっている。皆が起床する6時位まで待って、感動的に出迎えてもらおう。

 スコトン岬売店の風の弱い所にシートを敷き、携帯用防寒シートを被って寝ようとするが、海風は容赦なく吹き抜け、蚊はブンブンと寄ってくる。全く眠れない。
 さらに、たまに走り屋らしき車が猛スピードで岬の方へ突っ込んで行き、猛スピードでバックして帰って行く。恐ろしい。因縁つけられたらたまったものじゃない。
 その上、衣類にしみ込んだ汗が冷やされて、俺はガタガタ震えてきた。このままでは確実に風邪を引く。

 背に腹はかえられず、彦さんの起きる4時を待って電話をかけ、帰ることにする。もう夜明けが近い。東の空が、薄紫色に染まっていた。

 疲れた足どり  夜明けのスコトン岬1

 夜明けのスコトン岬2  夜明けのスコトン岬3

 夜明けのスコトン岬4  夜明けのスコトン岬5

 夜明けのスコトン岬6  星観荘へ

 物音を立てないように気をつけて、星観荘の玄関に入る。彦さん1人の出迎えによる静かなゴールになった。

 スコトン岬のゴールまで17時間45分。まずまずのタイムで礼文島一周を達成した。感動も大きいが、まずは暖かいベッドで横になりたかった。

 熱いシャワーを浴び、1時間程仮眠する。

 午前6時30分。普通に朝食を食べている俺を見て、皆驚いていた。

 「あんまり爽やかに朝食を食べてるんで、びっくりしました。」

 皆が言うように、1時間寝ただけでかなりすっきりしている。足の痛みは別にして。

 8月10日朝食  祝福の儀式1

 祝福の儀式2  祝福の儀式3

 祝福の儀式4  祝福の儀式5

 祝福の儀式6  祝福の儀式7

 朝食後、ブラックホールで、改めて24時間コース完歩の祝福の儀式をしてもらう。全員とハイタッチし、祝福の声をかけてもらった。

 ありがとう、本当にありがとう!!
 俺は暖かな気持ちで満たされていた。

 今日も3人、24時間コースを歩く人がいて、続いて見送りの儀式になる。
 その後、俺は、24時間コースの大門さん達3人を送り出してから、島抜けする人をフェリーターミナルまで見送りに行くのだが、その時のことはまた別の機会に…。



   24時間コース完歩記念



旅日記北海道編2008 特別編 24時間コース







余談

 ・ベテランの人は、コース後半、アスファルトになってからは、靴をスニーカー等に履き替えるらしい(そんな発想、全くなかった)。

 ・スコトン岬付近で仮眠をとるなら、須古頓のバス停が風除けがあって便利らしい(全然気づかなかった)。


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